2017 Fiscal Year Research-status Report
海洋溶存態有機物の分子サイズとバクテリアによる利用・分解特性
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17K12814
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
土屋 健司 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, JSPS特別研究員 (70739276)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 溶存態有機物 / 分子量 / バクテリア生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境傾度が比較的大きい沿岸域(水深120m)の夏季成層期において,溶存態有機炭素(DOC)の分子量分布の時空間変動を全有機炭素検出器によって調査し,バクテリア生産との関係性を調べた.海洋表層の水温は,21℃から26℃の範囲で変動し,調査期間中は水深20m~30mに水温躍層・成層が見られた.クロロフィルa濃度は混合層内または躍層付近で比較的高い値を示した.DOC濃度は混合層内で最大1.1 mgC L-1を示し,水深が深くなるにつれて低下し,水深100 mでは最低値0.65 mgC L-1を示した.DOCの分子量分布は,いずれのサンプルにおいても概ね2 つのピークが見られ,それらの重量平均分子量は1.3 kDa,100 kDaであった.それぞれのピークをそれぞれ低分子DOC,高分子DOCと定義すると,全DOC濃度に対する高分子DOC濃度の割合は1%~10%程度で変動し,表層で高く,深層に向かって低下する傾向を示した.バクテリア生産量とDOC濃度の関係を解析すると,全DOC濃度及び低分子DOC濃度とは有意な相関関係は見られなかったが,高分子DOC濃度とは有意な正の相関関係が見られた.以上のことから,高分子DOC濃度は全DOC濃度の最大で10%程度の現存量しか示さないものの,バクテリア生産の制限要因として重要な因子であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎月1回の海洋調査は確実に実施できており,順調にデータの取得を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは現場レベルでの溶存態有機物の分子量分布とバクテリア生産量との関係を調べてきた.今後は有機物の分解実験を実施し,現場観測のデータと統合して溶存態有機物の分子サイズと生物利用能との関係を明らかにするとともに,難分解性有機物の分子サイズの収束点を明らかにする.
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Causes of Carryover |
分解実験にかかる物品の発注を次年度に変更したため.
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