2017 Fiscal Year Research-status Report
地球システムモデルを用いた全球窒素循環における海陸生態系の機能評価
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17K12820
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
羽島 知洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 気候モデル高度化研究プロジェクトチーム, ユニットリーダー代理 (40533211)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 窒素循環 / 陸域生態系 / 海洋生態系 / 気候変動 / 地球システムモデル / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度前半では、本研究で実施する窒素循環に主眼を置いたシミュレーションを行うために必要となる入力データの整備を行った。モデル間相互比較プロジェクト等で使用される入力データから、農地への窒素施肥量に関する時空間変化情報を入手し、これを入力データに変換した。また、これらを地球システムモデルに読み込ませられるよう改変を行った。19世紀以降の窒素循環に大きな影響を与える農業活動の影響をシミュレーションに反映させるため、陸面グリッドにおける農業の取り扱いに関してモデルの改良および修正を加えた。具体的には、農地に対する年間窒素施肥の季節分配スキームの導入、および自然生態系における窒素固定に加えて農地における作物の窒素固定量の算出が可能になるようモデル改変を行った。年度後半では、使用する地球システムモデルにおいて窒素収支不整合の問題が発覚したため、この不具合の修正も行った。さらに、生態系・物質循環コンポーネントにおける硝化/脱窒過程での亜酸化窒素の発生量を診断できるようにするためのモデル改変および調整に着手した。本モデルを用い、年度後半において窒素循環の過去再現実験のためのテスト数値実験を実施した。本年度主に改変を加えた陸域の窒素収支を確認したところ、窒素固定速度、施肥による窒素投入量, および沈着による窒素流入量といった産業革命以降の人為影響大きい生態系への窒素流入速度の再現が良好であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度では、当初計画していた多くの数値実験を概ね完了させる予定であったが、使用予定であったシミュレーションモデルに全球窒素収支の不整合が見つかった。そのため、年度後半の多くはこの不整合問題の修正に時間を要し、一部計画していた実験(パルス状の窒素負荷を与える特殊感度実験)にまで着手することができなかった。なお、この不整合問題は解決した。計画にあった他の実験(産業革命以降の過去再現実験)は実施済み、結果が良好であることを確認しており、全体計画としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた特殊感度実験を実施するとともに、解析を行う。複数実験結果を組み合わせることにより、人間活動がどれくらい地球上の反応性窒素の総量を増大させてきたのか/反応性窒素が生態系にどれくらい 取り込まれたのか/ガス態として何割が放出されたのかを主として解析する。同時に、本数値計算 モデルの強みである気候-炭素循環と窒素循環の相互作用に関した解析 (例えば CO2 濃度の上昇が 窒素循環に与える影響等)も行う。また、例えば「ある特定の海域は、陸域のどの地点の影響を受けやすいのか」という点についての解析も試み、これを通して人間活動の影響が大きい地域の分離と特定を行う。
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Causes of Carryover |
H29年度に予定していた一部実験(データ出力が最も大きい実験)が遂行できなかったため、予定していたディスク購入を見合わせた。H30年度に該当実験を実施するため、ディスクを取得する予定である。
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