2018 Fiscal Year Research-status Report
地球システムモデルを用いた全球窒素循環における海陸生態系の機能評価
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17K12820
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
羽島 知洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 気候モデル高度化研究プロジェクトチーム, 技術研究員 (40533211)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素循環 / 陸域生態系 / 海洋生態系 / 気候変動 / 地球システムモデル / 物質循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に窒素循環過程の高度化を行った地球システムモデルおよび整備を行った入力データを用いて、年度前半では全球窒素循環過程に注目したテストシミュレーション実験を実施した。年度後半には、産業革命以前の状態から現在に至るまでの窒素循環の変動を再現するための実験を地球システムモデルを用いて実施した。その結果、陸域への窒素インプット(施肥、沈着、窒素固定)はいずれも増加しており、河川への窒素流出、脱窒、アンモニア揮発等が増加していた。また、生態系による正味吸収量も特に1940年代頃から急増しており、陸域生態系(農地含む)による吸収がこれまでの全球窒素動態に大きく影響していることを示唆する結果が得られた。また、この影響は河川を介して海洋にも影響しており、海洋への窒素沈着フラックスと同程度のフラックスを与えているというシミュレーション結果が得られた。 さらに、土地利用変化および農業活動だけを産業革命以前のレベルに固定する特殊な実験を実施したところ、農地における窒素固定量や施肥量が産業革命以前とほぼ同程度に維持され、窒素沈着とその生態系吸収のみが過去から現在にかけて大きく変動する、という結果が得られた。これにともなって河川を介した海洋への窒素インプット量も産業革命以前からあまり増加せず、これまでの土地利用変化および農業活動が、過去の陸域窒素動態のみならず海洋の窒素循環にも強く影響していることを示唆するという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、所属機関で開発が進められているシミュレーションモデル(地球システムモデル)を利用する予定であったものの、当該モデルの正式版リリースに遅れが生じ、これにともなって本課題でも遅延が生じた。早期リリース版を活用する方策も考えられたが、正式版は次期IPCC報告書向け実験等にも利用され、これと整合したモデルを使用することは本課題成果の波及効果等においても重要であると判断し、正式リリース版を待ったことにより遅れを生じた。なお、解析については早期リリース版を用いた初期解析結果が得られており、シミュレーション結果および解析方法について問題ないことを確認済みである。また、モデルの正式版も年度末にリリースされており、次年度では本課題でも問題なく使用できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
地球システムモデルを用いた正式リリース版を用いた過去再現実験を関連研究者および関連研究課題との連携のもと実施し、窒素循環を平成30年度に実施した解析を差し替える形で再度行う予定である。得られた結果については、関連研究課題での成果と合わせて研究論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」にもあるように、所属機構で開発が進められているシミュレーションモデルの正式版リリースに遅れが生じたため、本研究課題で実施する解析を本格的に実施するに至らなかった。次年度使用額は、研究計画に予定されていた通り、解析用PCおよび解析結果格納のためのストレージ、および論文執筆・出版のための諸費用に充てる予定である。
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