2017 Fiscal Year Research-status Report
放射光円二色性分光によるヒストンのDNA損傷誘起「異常構造」形成過程の解明
Project/Area Number |
17K12825
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
泉 雄大 広島大学, 放射光科学研究センター, 助教 (20595772)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | DNA損傷応答 / ヒストン / 円二色性 / 翻訳後修飾 / 放射線生物学 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに行った我々の研究から、DNA損傷に伴って細胞内でヒストンタンパク質の構造が変化することが明らかになっている (Y. Izumi et al., 2015, 2016, 2017)。この構造変化過程を明らかにするために、平成29年度は、放射光を光源とした円二色性分光によりメチル化されたヒストンタンパク質H3の構造を調査することで、化学修飾によってヒストンに構造変化が生じるかどうかを探ることとした。 その結果、4番目あるいは9番目のリジンのメチル化によってH3に構造変化が起きることが確認された。これらの修飾は、DNA損傷応答により細胞内で施されることが知られている。したがって、先行研究で観測されたDNA損傷細胞におけるヒストンの構造変化は、このような化学修飾に起因する可能性が示された。しかしながら、上記の修飾単独では細胞内で観測された構造変化を説明することはできなかったため、アセチル化などの他の修飾あるいは複数個所の修飾による構造変化の寄与が必要であると考えられ、引き続き調査が必要である。また、興味深いことに、付加するメチル基の位置(4番目あるいは9番目)や数(1-3個)で異なる構造変化が生じることが明らかとなり、構造変化の大きさに依存性がある事が示された。ヒストンの化学修飾による細胞機能の制御には、こういったヒストンの構造変化が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。 平成29年度の成果として、査読付き論文2報が国際誌に既に掲載されている。内、1報に関してはプレスリリースを行い、科学新聞(平成29年12月22日号)に掲載された。また、2件の招待講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA損傷により誘起されるヒストンの構造変化過程の解明に向けた端緒を開くことができたと考える。また、2報の査読付き論文が国際誌に掲載され、科学新聞での記事の掲載といった成果も得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は29年度に引き続き、修飾ヒストンの構造解析を進める。また、薬剤等を用いて細胞内で働く機能を限定した上でDNA損傷を与え、ヒストンの構造変化の有無やこれまでに観測された構造変化との差異を調査することで、DNA損傷誘起構造変化過程の原因を探る。
|
Causes of Carryover |
[次年度使用額が生じた理由] 当初の想定よりも順調に実験が進んだため、試薬購入のために使用する予定であった費用を繰り越すこととなった。また、安価な交通手段を積極的に利用することを心掛け旅費を節約したため、旅費の一部を繰り越すこととなった。 [使用計画] 平成30年度分の助成金は、29年度の繰越金と併せて、試料作製のための試薬購入費用、成果発表のための旅費、論文投稿費、オープンアクセスの費用として使用する予定である。
|