2017 Fiscal Year Research-status Report
微小粒子状物質に含まれる水溶性有機物の実態解明と発生源の推定
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17K12829
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Research Institution | Japan Automobile Research Institute |
Principal Investigator |
須藤 菜那 一般財団法人日本自動車研究所, エネルギ・環境研究部, 研究員 (70791424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粒子状物質 / 水溶性有機炭素 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小粒子状物質(PM2.5)は人体への健康影響が懸念されており,これまで様々な環境対策が進められてきた.PM2.5の約3割を炭素成分が占めており,中でも有機炭素は発生源から直接排出される一次粒子と揮発性有機化合物等が大気中で反応してできる二次粒子の両方を含んでおり,数百から数千種類の成分が存在する.そのため,発生源が非常に複雑であり,未だ実態が解明されていないのが現状である.そこで本研究では,有機炭素の中で主たる成分である水溶性有機炭素に着目し,それら成分の定性・定量分析を行い,近年開発された安定同位体比質量分析法を利用して発生源の解明を目的とする. 平成29年度は,水溶性有機炭素の季節傾向を把握するために,茨城県つくば市と秋田県由利本荘市の2地点でハイボリュームエアーサンプラーを用いてPM2.5の大気観測を実施した.得られた大気試料は,誘導体化GC/MS法にて成分を定性,全有機炭素計にて定量分析を行った.水溶性有機炭素は季節により主要成分が異なっていることが確認された.さらに,液体クロマトグラフ/安定同位体比質量分析計(LC/IRMS)を用いて,新たな水溶性有機炭素の安定同位体分析手法を構築した.元素分析計を使用していた従来の方法に比べて,前処理工程が非常に簡易になり,高精度・高確度な分析法を確立することができた.大気試料の分析では,季節や観測地点によって炭素安定同位体比の違いがみられた.今後は構築した分析法をもとに,水溶性有機炭素の安定同位体分析を進め,発生源の推定を行いたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,大気観測の開始,大気試料について水溶性有機炭素の定性・定量分析,新たな安定同位体比分析手法を構築させた.特にLC/IRMSを用いた安定同位体比分析手法は,従来法よりも前処理が非常に簡易になり大きな利点がある.よって,研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,前年度に構築した水溶性有機炭素の安定同位体比分析手法をもとに,大気試料の分析を進めていく.また,発生源の推定のために,水溶性有機炭素の主要な発生源について安定同位体比測定を実施し解析を進めていく予定である.
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