2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K12842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 博徳 九州大学, 工学研究院, 助教 (00599649)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グリーンインフラ / 伝統工法 / 空石積み / 多自然川づくり / 歴史的構造物 / 防災 / 生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦には、近世の伝統的土木技術による河川構造物が多く現存する。このような伝統的河川構造物は、近年グリーンインフラの重要な手法の一つとして注目を集めている。本研究では、福岡県を流れる野鳥川を対象として、伝統的構造物のもつグリーンインフラとしての機能を、環境・治水の両側面から評価する。それにより、環境と治水の両立する河川管理手法の確立に資する知見を得ることを目的としている。初年度であるH29年度は、初めに野鳥川における河川構造物の分布状況を詳細に把握した。河川構造物のうち河道の形態を決める上で特に重要な機能を有する護床工については、対象区間に17基存在し、そのうち4基が伝統工法による空石積みの護床工であることが確認された。空石積み護床工のグリーンインフラ機能を評価するために、底生動物の分布状況および魚類の生息状況について調査を行った。その結果、(1)野鳥川における伝統的河川構造物の空石積みの護床工は,その構造によって魚類の往来を妨げないこと.(2)空石積みの護床工上に生息する底生動物の種数は自然の区間と比べても有意差はなく,伝統的な工法を模倣した練積みタイプの護床工や従来のコンクリートタイプの護床工と比べて,自然に近い環境機能を有していること.(3)空石積みの護床工上の魚類の平均生息密度は,伝統的な工法を模倣した練積みタイプの護床工や従来のコンクリートタイプの護床工と比べて大きいこと等を明らかにした。治水機能については、H29年7月に起こった出水時の流況を現地で詳細に観測し、(1)護床工の縦断勾配を局所的に変化させ、跳水を意図的に起こして減勢する。(2)水衝部は護岸の形状を変え、水制を活用し、二次流を起こし、本流の流れとぶつけることで洪水流の勢い減勢する。(3)水衝部の堰では川幅を上下流に比べて広く取ってあり、水位を下げる効果を有する。等の知見を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通り進展している。一方、研究対象地は福岡県朝倉市に位置するため、平成29年7月九州北部豪雨の影響を受けた。研究対象とした構造物もいくつかが被災し、計画通りに調査研究が行えなかった部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、研究対象地は福岡県朝倉市に位置するため、平成29年7月九州北部豪雨の影響を大きく受けた。そのため、研究対象とした河川構造物もいくつかが被災し、今後も計画通りに調査研究が行えない部分があると想定される。一方で、洪水時の水の流れに関する情報など、大規模出水時にしか得られない貴重なデータも取得できており、それらを活用した分析を行うことを重点的に進める方向で考えている。また、今次災害で被災した伝統構造物を詳細に測量、調査することで、もともとは把握できなかった地中の構造などについても詳細に把握できる可能性が出てきた。そのため、被災した構造物の詳細な調査については追加で実施したいと考えている。
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