2019 Fiscal Year Annual Research Report
Green infrastructure functions of traditional river structures in Japan
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17K12842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 博徳 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00599649)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 伝統構造物 / 河川構造物 / 堰 / 落差工 / 石畳 / グリーンインフラ / 歴史 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
H31年度には、石畳堰(石造りの護床工)のエネルギー減勢機能に関して正確な特性を明らかにするために、縮尺を大きく(1/30)した水理模型実験を行った。1/30スケールの模型では、前年度の模型(1/50スケール)では表現できなかった石の積み方なども現地測量調査の結果をもとに正確に表現した。なお、石畳堰の減勢効果について通常のコンクリート堰と比較するために、石畳堰と同じ勾配で石を積まずに板を張った斜路(コンクリート製斜路堰を想定)、堰天端から下流側河床まで垂直落差を設けた段落ち堰(コンクリート製の垂直落差を持つ堰を想定)の2タイプの堰でも同様の実験を行った。水理実験の結果から、石畳によって流速が大きく減勢されることが明らかとなった。同様の構造(勾配と落差)のコンクリート段落ち堰に対し32%、斜路堰に対し29%程度の流速減勢効果を有することが示された。射流部の流速(最大流速)について、フルード相似に従い現地流速に換算すると、石畳堰のみが、空石積み護岸の設計流速である5m/sを下回っており、空石積みでの施工を可能とすることが示唆された。このように、本研究によって伝統的石造り河川構造物の水理機能が定量的に明らかとなりつつあり、前年度までに明らかにしてきた環境機能とも合わせて、その成果はすでにH29年九州北部豪雨の災害復旧事業においても反映されている。河川管理者と協議の上、本研究対象でもある野鳥川の現場に石畳構構造物の復旧施工がなされている。竣工にあたっては、地元住民との勉強会や本研究成果のシンポジウムなども逐次実施しながら、民官学で連携して行ってきた。その結果、地域の景観の保全だけでなく、住民の意識向上や主体的な維持管理などの効果も見られつつあり、地域づくりへの発展ともいえる成果が得られつつある。
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