2018 Fiscal Year Research-status Report
森林減少・劣化の抑制活動に対しての総合的パフォーマンス評価手法の開発
Project/Area Number |
17K12844
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平塚 基志 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00649585)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 焼畑移動耕作 / ケーバビリティ / パフォーマンス評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラオス北部での森林減少・劣化に対して、その抑制のための活動(REDD+活動)が実施されているが、現状ではREDD+活動の成果をGHG排出削減量という単一指標で評価することとなっており、村落及び地域住民の特徴(自然的条件及び人的条件)もしくは森林保全を進める上での難易度が考慮されていない(総合的にパフォーマンスを評価しきれない)。本研究ではラオス北部のルアンプラバン県ポンサイ郡ホアイキン村落クラスターの6村を対象に、実施されているREDD+活動(REDD+実証事業)の効果を検証するとともに、自然条件(森林率、地形、土壌条件、森林タイプ、非木材生産物等)及び社会条件(民族構成、社会インフラの整備状況、潜在能力等)に基づく公平性を担保した総合パフォーマンス評価手法を開発することを目的とした。研究対象としたホアイキン村落クラスター内にあるHouaykhing、Sakwan、Houayha、Houaytho、Longlath、Phakbongの6村は民族構成が異なっており、世帯あたりの森林面積(アクセス可能な森林資源量)も大きく異なっていた。このように自然条件と社会条件が異なる地域であることは、焼畑移動耕作への依存度も異なり、焼畑移動耕作を抑制すること(森林保全を進めること)の難易度が異なることが分かった。このため、REDD+実施による成果をGHG排出削減量という単一指標だけを用いれば、GHG排出削減量の獲得が困難な地域にとっては不公平感が生じることが推察された。 以上の研究進捗を踏まえ、2018年度は6つの村落を民族構成に基づき4つに区分し、それぞれのREDD+活動期間中(2012年から2018年)の家計収入の変化、森林資源への依存度の変化(焼畑移動耕作の対象面積の変化)、家畜飼育による放牧地の面積変化といったパラメータを用いて、森林保全への難易度が大きく異なることを定量的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究対象としたホアイキン村落クラスターの6村において、「自然条件及び社会条件の違いと森林保全を進めるための難易度の関係整理」を進めるため、自然条件として6村の土地被覆(2010年と2015年に加え、2012年と2018年を追加)を解析した。また、地形(傾斜及び標高)についても解析した。次に、社会条件として各村における民族構成、森林資源への依存度(焼畑移動耕作への依存度)について明らかにするため、キノコ等の非木材生産物への依存度とそれに関係する森林資源(とくに天然生林)の保全システムを整理した。 こうした基礎情報を踏まえ、地域住民に対しては5段階の間隔尺度を踏まえた調査票を用いた個別インタビューに加え、村長等への聞き取り調査を行った。その結果、モン族を主要民族とする村(Houayha)、カム族を主要民族とする村(Sakwan)、そして両民族が同程度の人口割合にある村(Houaytho及びHouaykhing)では、土地・森林管理についての共同の程度に違いがあり、2つの民族で構成される村(Houaytho及びHouaykhing)では民族間の軋轢が高まらないように、より共同での活動が推進されていることが分かった。一方、その他の村では一部の住民による家畜飼育が拡大し、所得格差が拡大傾向にあることが分かった(ジニ係数が拡大傾向にある)。そして、結果的に一部の住民(家畜を多く飼育していない住民)にとっての焼畑移動耕作への依存度が軽減されていない結果だった。 以上より、REDD+実施の際に適用される「結果に基づく支払い」を踏まえれば、焼畑移動耕作を削減すること(1ha削減するにあたっての難易度)が村レベルの自然的条件及び人的条件によって異なることに加え、村内のガバナンスシステム(とくに貧困層への配慮システム)も焼畑移動耕作への依存度に大きな要素になっていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、2019年度はラオス北部での世界銀行が支援するREDD+事業が開始される予定であることから、これまでに調査対象としたREDD+事業に加えて研究対象にする。引き続き「自然条件及び社会条件の違いと森林保全を進めるための難易度の関係整理」を村レベルの比較及び村内の住民間の比較から進める。加えて、ルアンプラバン県で進められているREDD+実証事業と連携して試行的支払いのプロセスの分析、支払いを受けた住民及び支払い対象外となった住民への個別インタビューを進め、支払いシステムの課題抽出を取りまとめる。 以上より、森林保全へのインセンティブ付与を総合評価するが、一連の成果はラオス北部で進められているREDD+事業(日本とラオスの二国間合意に基づく事業)において「総合パフォーマンスを考慮した地域住民への配慮」がなされることに資するように整理する。そうなることでREDD+事業の円滑な実施に貢献すること、さらにはラオスを含めたメコン流域におけるREDD+事業にも活用される(成果の横展開)ことが期待される。
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Research Products
(4 results)