2018 Fiscal Year Research-status Report
妊婦と胎児へのカトマンズ市内大気汚染被害の実態とその緩和策に関する実証研究
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17K12854
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
伊藤 豊 秋田大学, 国際資源学研究科, 講師 (00633471)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大気汚染 / 自然実験 / ネパール / カトマンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はネパールの首都カトマンズにおいて大気汚染の健康への影響について、国境封鎖期間を利用した自然実験により、胎児の出生体重について聞き取り調査を行うことで、その深刻さを定量的に明らかにすることである。 今年度の進捗は主に二つである。一つは昨年度に行なった本調査のデータ解析である。サンプルサイズを増やした検証を行なったところ、昨年度に行なったプレ調査の結果とは異なり、国境封鎖期間中と封鎖前、封鎖後において、幼児の出生体重に統計的な違いが見られないことが推察された。調査内容についてはGISを用いてカトマンズの区画をランダムに選定されたエリアについて調査を行なったデータを用いたことから、カトマンズ全体としては差が見られないことが考えられる。現在は調査内容のうち他の健康状態に関する調査結果と、他のソースから取得可能なデータを結合させて別途検証を行っており、本研究の仮説を裏付ける結果が得られた場合は次年度には論文を執筆して投稿する予定である。 二つ目は論文の執筆である。本研究の主目的である国境封鎖期間中の胎児の健康状態に関する影響については、生活水準が首都カトマンズと、その他の農村地域の住民では異なる可能性がある一方、その証明も必要であることから、首都圏以外での同時期の検証も行う必要があった。そのため、首都圏と農村地域での相対比較を行うために近隣農村地帯の住民に関する社会調査を行なった結果についてまとめて論文を執筆し、現在海外論文誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度におこっなったプレ調査から予想される、本調査でのサンプルサイズが、実際に得られたサイズよりも少なかったことも可能性として考えられるが、プレ調査において検証した時の結果と今年度に行なった本調査の解析が異なること、さらに本調査で検証した内容が、仮説を裏付ける結果になっていないことから、予定されていた論文の執筆を進めることができず、他のアプローチや仮説の検証を進めている。マスクの配布においては、ネパール国内で市販されているマスクについて、健康被害に特に影響があるとされるPMの除去機能が弱いことが想定されたため、日本国内で市販されている高機能マスクを使用することを想定したが、検証を十分に行うためのサンプルサイズを得るために必要となる購入金額が想定よりも高額であったため、現段階での実施が困難と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本調査のサンプリングについてはカトマンズ全体を網羅可能な手法を使用したが、より大気汚染が深刻な道路沿いや舗装がほとんどされていない箇所に注目した検証を行うことで、対象をより絞って仮説の検証を行いたい。さらに、カトマンズ内にある病院の調査も行なっており、国境封鎖中、およびその前後での来院者に関するデータの取得について交渉中であることから、データが入手できた場合には他の健康指標を用いた解析を行いたい。
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