2018 Fiscal Year Research-status Report
漁業者主導による森林コモンズの可能性:漁民の森づくりの活動実態に関する比較研究
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17K12860
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
岩崎 慎平 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20708028)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漁民の森づくり / 森林コモンズ / 流域環境ガバナンス / 森林ボランティア / 過少利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「漁民の森づくり」に着目し、同活動の実態を全国規模で解明するとともに、漁業者主導による森林コモンズの可能性を探ることを目的とする。漁民の森づくりは、森・川・海をひとつながりの生態系として捉え、漁業を営む沿岸海域に流れ込む河川の流域において、荒廃した土地を再生するために漁業者が植林・育林を行う環境創造的な取組である。本研究では、①漁民の森づくりの史的展開の整理、②日本全国の活動実態の定量的評価、③漁民の森づくりの継続性を支える要因に関する事例研究、④漁業者が森づくりに関わる海外事例の収集を行うことによって、漁業者主導による頑健な森林コモンズ構築のための要件を探究する。 本年度の研究では、漁民の森づくりの活動変遷を明らかにするために、既往文献や各種統計情報の収集・整理を行うとともに、東日本大震災の影響で2011年度以降の活動実態に関する統計情報が集められていない東北3県の漁協および関係機関を対象にヒアリング追跡調査を行った。また、2000年度以前から漁民の森づくり活動に長く関わっている(きた)実施機関を対象とし、漁業者主導の頑健な組織マネジメントに求められる有形資源・人的(無形)資源・仕組み等を明らかにするためのケーススタディを行った。海外事例については、タイ沿岸域のマングローブ植林に精通する研究者やインドネシア・アチェ州の伝統漁業管理組織Panglima Laotによる森林管理に精通する研究者にヒアリングを行い、国外の漁民の森づくりに関する情報を収集した。その内、タイの事例調査で得た研究成果の一部を英文図書として分担執筆した。これらの活動でまとめた結果・知見を基に2019年度に開かれる国際コモンズ学会で報告を行うとともに、日本における漁民の森づくり活動に関する定量的評価、および漁民の森づくりの継続性を支える要因に関するケーススタディに着目して、それぞれ論文を投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に開かれる国際コモンズ学会に研究成果を発信することを目標として、漁民の森づくり活動に関する情報収集およびヒアリング調査を行った。目標はおおむね達成できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
四半世紀を超える漁民の森づくり活動の史的展開をレビューするとともに、同活動の実績を時空間上で定量的に評価する。そのうえで、漁民の森づくり活動の頑健な組織マネジメントに求められる有形資源・人的(無形)資源・仕組み等を特定事例に基づき検証を行う。さらに、文献およびフィールド調査を通じて、海外で漁業者が森づくりに関わる事例や森・川・海のつながりと漁業との関係を評価し、漁民の森づくり活動の継続性を支える要件や流域環境ガバナンスに向けた漁業者の役割・課題を分析する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、漁民の森づくり活動の史的展開および同活動の実績を整理するとともに、ヒアリング調査を実施する予定であったが、データ収集・整理に多大な時間を要したことから先送りすることにした。また、次年度に予定する国際学会の発表、日本国内のヒアリング調査や海外事例調査を実施するためには相当額の旅費がかかるため、本年度予算の一部を次年度に繰り越すことにした。
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