2022 Fiscal Year Research-status Report
漁業者主導による森林コモンズの可能性:漁民の森づくりの活動実態に関する比較研究
Project/Area Number |
17K12860
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
岩崎 慎平 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (20708028)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 漁民の森づくり / 森林コモンズ / 流域環境ガバナンス / 森林ボランティア / 過少利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「漁民の森づくり」に着目し、同活動の実態を全国規模で解明するとともに、漁業者主導による森林コモンズの可能性を探ることを目的とする。漁民の森づくりは、森・川・海をひとつながりの生態系として捉え、漁業を営む沿岸海域に流れ込む河川の流域において、荒廃した土地を再生するために漁業者が植林・育林を行う環境創造的な取組である。 本年度の研究では、漁民の森づくりの活動変遷とその活動の継続性を支える要因に焦点をあて、資料収集および事例調査を実施した。具体的には、近世から現代までの史的変遷をレジリエンスの視点から紐解き、適応循環モデルを用いて同活動の継続性を支える要因を検討した。適応循環モデルは、4つの段階(試行期→安定期→解体期→再構成期)から構成され、本研究では、現代における漁民の森づくり活動が適応循環のどこに位置するのか、同時に過ぎ去った変遷の循環について把握することを試みた。その結果、漁民の森づくりの史的変遷を二度の循環体系に整理した。第一の循環体系は幕藩領主の介入による沿岸部を主とした「魚付き林」制度、第二の循環体系は環境悪化および漁業構造の変化や魚付効果研究の進展を受けて1980年代後半・90年代初頭から流域全体を対象にして取り組む森づくり運動である。また、青森県・北海道における追加の事例調査結果を踏まえて、現代における漁民の森づくり活動の持続性を確保する手立てとして、協働型森づくり、主要施策への統合、財源多様化の戦略、森づくりの付加価値化などを特定した。これらの知見を基に、日本湿地学会第14回釧路大会で成果を発表し、学会発表奨励賞を受賞した。今後は、これまでに収集した文献資料や事例調査結果を整理し、国際学会での成果報告および学術誌への投稿を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、現地調査の実施などに遅れが生じた。そのため、研究期間をさらに1年間延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、四半世紀を超える漁民の森づくり活動の史的展開および活動実績を明らかにした。そのうえで、漁民の森づくり活動の頑健な組織マネジメントに求められる有形資源・人的(無形)資源・仕組み等を特定事例に基づき検証を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画では、最終年度に本研究成果を国際学会で報告・議論し、本研究課題に対する関係研究者らへの関心を呼び込むと同時に、本研究の知見をさらに磨き上げる予定であったが、新型コロナウイルスの影響でその機会が限られていた。次年度に国際コモンズ学会で口頭発表を実施するためには相当額の旅費がかかるため、本年度予算の一部を次年度に繰り越すことにした。
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