2019 Fiscal Year Annual Research Report
温泉事業と共生する地熱開発に向けた手続統合型持続可能性アセスメントの手法
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17K12862
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
柴田 裕希 東邦大学, 理学部, 准教授 (40583034)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地熱 / 持続可能性アセスメント / 再生可能エネルギー / 社会影響評価 / 合意形成 / 戦略的環境アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
世界において再生可能エネルギー導入は緊急の課題であり、とりわけ我が国では地熱開発への期待が高い。一方、我が国の地熱地帯の多くには豊かな温泉文化が発達し、これを支える温泉事業者との合意形成は、地熱開発において極めて重要なプロセスの一部である。これまでの研究から、この克服に環境アセスメントを応用した、科学的な影響評価とステークホルダ参加による合意形成が有用であると考える。また欧米では、このような課題に対応した統合的な環境管理ツールとして持続可能性アセスメント(SA)の研究が進められている。本研究ではこれまでの欧米の事例研究の実績を踏まえ、「手続統合型SA」を用いて我が国の地熱開発において社会的合意形成に基づいた効率的な開発と持続可能な資源利用を可能にする政策手法の開発を目指した。 研究では、開発初期段階で計画熟度が低く、従来の環境アセスメントの方法論の適用が難しい段階において、開発事業者と温泉事業者の間で合意形成を実現させるための政策ツールを開発するために、地熱開発の社会・経済面のSAについて国内外の知見を収集した。はじめに、地熱資源について先住民との文化的・歴史的コンフリクトを克服し、開発の合意形成を実現しているニュージーランドの政策手法について現地調査を実施した。これにより、開発手続と一体化した文化影響評価(CIA)の仕組みや、地域コミュニティ主導のプランニングシステムの存在が、文化的・歴史的に容易とは言えない先住民コミュニティとの合意形成を可能にする重要なツールとなっていることが確認された。 さらに、地熱開発において問題となる地域資源の便益分配の課題についても、山東氏らによって提唱された地域付加価値分析(RVA)を国際影響学会(IAIA)の提唱する社会影響評価(SIA)プロセスの中で一体的に用いることで、地域的合意形成に寄与する可能性があることが示唆された。
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