2017 Fiscal Year Research-status Report
Missing link between marine protected area and drug trafficking - Toward the study of "protected area for the crime deterrence".
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17K12863
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
武田 淳 人間環境大学, 人間環境学部, 講師 (00779754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コスタリカ / 自然保護区 / 海洋保護区 / 安全保障 / 麻薬対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、調査計画書に基づいて2回の海外調査、2回の学会報告、1本の査読論文を発表した。昨年度前半の目標は、今後の研究計画をより明確にすると共に、現地調査に向けた準備に取り組むことであった。そこで、5月に日本国際観光学会の例会にて研究発表を行い、研究の全体像に対してコメントを受けた。これを基に現地調査の詳細な計画を立て、8月23日から9月8にかけての17日間、コスタリカで現地調査を実施した。 平成29年度後半には、現地調査で実施した成果をまとめることを目標としていた。具体的な成果としては、10月に実施された日本国際観光学会の全国大会にて発表を実施した。さらに、ここでれられたコメントを基に、現在までの成果を一つの論文としてまとめ、3月に日本国際観光学会論文集第25号に、「コスタリカのウミガメ観光における地域ガバナンス―積極的平和構築のツールとしての観光研究へ向けて」(査読あり)を発表した。さらに、平成30年2月8日~20日までの13日間、再びコスタリカへ赴いて第二回目の調査を実施した。現地では、現地協力者の計らいでコスタリカの自然保護区を管轄する行政庁「国家保全地域庁」の会議に出席した。本研究が対象とする国立公園の周辺に位置する自然保護区の行政官と面識を深めることができ、今後の研究に関わる協力者を得ることができた。 なお、研究費の支出については、3年間の研究にかかわる研究機材の購入も完了し、平成30年度の研究体制も整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は、概ね順調に進んでいる。とりわけ、計画書に記載した5月の研究発表および2回の海外調査が予定通り実施できた他、現在までの成果を10月に学会で報告し、3月に査読付き論文を発表することができた。 また、研究内容に関する進捗状況についてであるが、本年度は、申請書に記した研究の全容のうち第一部(海洋保護区制度の構造および歴史分析)および第二部(海洋保護区の管理に関する実態分析)に着手した。第一部については、コスタリカの海洋保全について具体的に指針を示した「国家海洋戦略」の原文を入手して内容の精読を行うと共に、環境基本法などの関連法を参照しながら同戦略の法的な位置づけを整理した。第二部の研究は、8月と2月に実施した二度の現地調査をもとに進めた。人事異動により、調査対象の国立公園の所長が交代したことから、新所長からヒヤリングを実施し、今後の公園管理の方針を確認した。現地調査による新たな成果としては、国立公園の管理を市場原理に基づいて運営したいという省の方針が公園の現場レベルにおいても浸透しており、具体的な方策が議論され始めていることが分かった。市場原理に基づく公園管理が、本研究の主題である公園の治安の問題にどのような影響を与える得るのか、という新たな研究課題が見えてきた。 また、研究計画からの変更点としては、平成29年10月にコスタリカのサンホセで実施された国際会議「第21回メソアメリカ生態系保全会議」に出席する予定を立てていたが、本務校の学務などの都合上、出張が叶わなかったことが挙げられる。そこで、平成30年2月に実施した現地調査において、会議に出席した行政官らから情報提供を依頼し、補足を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる次年度は、第一部(海洋保護区制度の構造および歴史分析)の研究を完成させつつ、第二部(海洋保護区の管理に関する実態分析)の精度を上げるため追加の現地調査を行うことが目標となる。 平成30年度前半は、第一部に関する調査・検討を実施する。初年度の研究をまとめつつ、これまでの成果を日本国際観光学会(5月)において発表する他、ラテンアメリカ学会(6月)において中南米の地域研究者、日本環境学会(6月)において環境政策の研究者との情報交換を実施し、今後の研究に対するコメントを受ける。これらのコメントを基に、コスタリカの海洋保全政策に関する国レベルの動向をまとめる。第二部については、8月の後半からインタビューを中心とする一次資料の収集のためにコスタリカに赴く。引き続き、マヌエルアントニオ国立公園の関係者らへの調査を実施すると同時に、コスタリカ共和国立法議会図書館にて一次・二次資料の収集を行う。 平成30年度後半は、8月の現地調査の成果を基に、現場の視点から第一部の研究を再考する。海洋保護区を巡る制度の構造に対し、現場で起きている実態を整理することで、「なぜ、海洋保護区は麻薬取引に利用されてしまうのか」という本研究の問いに対して大方の答えを示すことを目指す。その上で、ここまでの研究の課題を再度整理し、2月に追加の現地調査を実施する。なお、最終年度となる平成31年度は、研究対象とする国立公園へ研究の成果還元(公園の管理計画への成果反映)を目指している。
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Causes of Carryover |
主要な支出項目である海外旅費(本研究に関わる現地調査)が、現地の為替レートの都合で計画よりも安くなった。そのため、約5,000円のあまりが生じた。余剰額については、次年度も同様の海外調査を予定しており、その費用に充てる計画である。
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