2018 Fiscal Year Research-status Report
Missing link between marine protected area and drug trafficking - Toward the study of "protected area for the crime deterrence".
Project/Area Number |
17K12863
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Research Institution | University of Human Environments |
Principal Investigator |
武田 淳 人間環境大学, 人間環境学部, 講師 (00779754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自然保護区 / 麻薬取引 / エコツーリズム / コスタリカ / エコ統治性 / ポリティカルエコロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、中米地域で深刻になっている麻薬問題を自然保護区政策の文脈から捉え直す試みである。研究2年目となる2018年度は、初年度の成果をまとめると共に研究成果の発信に努めた。また、さらなる研究の深化へ向け、現地調査を2度実施した。以下、研究成果の発表と現地調査について概要を記す。 2018年度は、3本の研究論文(いずれも査読付き)を発表した。論文①:武田淳「コスタリカのウミガメ観光における地域ガバナンス―積極的平和構築のツールとしての観光研究へ向けて」『日本国際観光学会論文集』25号7-14頁。論文②:武田淳・立脇隆文「岡崎市宮崎地区における林野の形成―針葉樹林の出現と共有地の再編成」『地域活性化研究』17号34-43頁。論文③:立脇隆文・武田淳「額田地域・男川流域の神社や針葉樹林におけるムササビの生息状況」『地域活性化研究』17号24-33頁。なお、このうち論文①については、学会誌の巻頭論文として掲載されるなど、一定の評価を受けた。 また、1本の口頭発表(招待有り)を実施した。発表①「コスタリカのウミガメ観光における地域ガバナンス―積極的平和構築のツールとしての観光研究へ向けて」日本国際観光学会第25期総会。 上記のような発表に加え、2019年度へ向けた研究の発展のため、8月と3月に研究対象であるコスタリカに赴き、現地調査を実施した。いずれも、本研究でターゲットとしている海洋国立公園において、国立公園職員に対してインタビュー調査を行った。また、当該国立公園の周辺の自然保護区を訪問し、同様に公園職員および地域住民に対しインタビュー調査を実施した。初年度の調査は、研究対象の国立公園をピンポイントに観察していたが、2年次は、視野を広域にとらえることで、より地域の実像を立体的に把握しようと努めた点が異なる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。理由としては、第一に現地調査が問題なく遂行できていること、第二に調査の成果が論文という形で着実に発表できていることが挙げられる。以下上記2点について掘り下げる。 人類学系のフィールドワークは、現地の情報提供者との関係性に左右される。本研究が対象とするのは、国立公園の職員が主となる。しかし、公務員である職員らは人事異動のために数年単位で職場を異動することがある。2018年度の現地調査では、主となる情報提供者が異動になるハプニングがあったが、新任の職員とも良い関係を築くことができ、問題なく調査を進めることができている。 こうした情報提供者との関係のもとで渉猟した一次資料を基に、2018年度は成果を発表することができた。中でも、論文「コスタリカのウミガメ観光における地域ガバナンス―積極的平和構築のツールとしての観光研究へ向けて」(『日本国際観光学会論文集』25号7-14頁)では、本研究が問おうとしている「なぜ、自然保護区が麻薬取引の現場として利用されてしまうのか」という課題の基礎的な背景を整理しつつ、問題をどのように解決したらよいのか、具体的な解決策を言及することができた。 なお、当該論文は、学会誌の巻頭論文として掲載され、学会内で一定の評価を受けた。また、このことがきっかけとなり、5月には招待講演の依頼があった。さらに、ここでの報告がきっかけとなり、学会内で安全保障と持続可能性をテーマにした研究部会の創設が検討されるなどのインパクトもあった。 以上のように、現地調査が問題なく遂行でき、その成果を着実に発表し、かつ、成果が社会的インパクトを持つようになった。そのため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、これまでの研究成果のまとめ上げることが目標となる。具体的には、研究論文の発表を計画している他、報告書を作成し関係各位に配布を行う。また、一般向けの講座などを通じて、社会に広く研究成果を還元することに努める。 まず、4月には、これまでの成果を一般に報告するために、講演会を実施する。具体的にはJICA中部との共催で、市民向けのセミナーを実施する。また、6月までには、これまでの成果をまとめた研究論文を投稿する(日本環境学会を予定)。 本年の後期には、報告書作成の作業に取り掛かる。まず、9月には最後の現地調査に出向き、報告書をまとめるにあたっての情報の最終確認・関係者への挨拶を行う。その成果を基に、10月には学会発表(日本国際観光学会を予定)を実施する。ここでのコメントを反映させ、11月以降は報告書の作成へと移る。年内には文章をまとめ、年明けには印刷・配布を行う。
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Causes of Carryover |
海外調査における航空券が予定よりも安く購入できたため、予算の削減ができた。一方、2019年度は、報告書の作成を予定している。この研究プロジェクトを遂行するにあたって、新たな情報提供者・協力者が増えたため、報告書の印刷予算を当初の予定より多く計上しなければならなくなった。そこで、繰り越し分の予算は、報告書印刷代などに充当する。
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Research Products
(4 results)