2021 Fiscal Year Annual Research Report
Modern Design and Women Designers in Austria: Viennese Design around World War I
Project/Area Number |
17K12871
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
角山 朋子 神奈川大学, 国際日本学部, 准教授 (70790343)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オーストリア近代デザイン / ウィーン工房 / ウィーン・キネティシズム / 装飾 / モダニズム / 女性デザイナー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第1次世界大戦前後のウィーン工房とウィーン・キネティシズム派を主要研究対象とし、オーストリア近代デザイン史における女性デザイナーの意義の究明を課題とする。昨年度に引き続き現地調査が実施できなかったため、女性たちの活動背景をデジタルアーカイブの史料や文献を用いて調査し、昨年度までの調査内容と合わせて女性たちの制作活動の広がりとその促進要因を明らかにすることに注力した。 本年度は、ウィーン工房のフェリーツェ・リックス(上野リチ)に焦点を当てた〈上野リチ展:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー〉(京都国立近代美術館他)が開催され、本研究課題の研究対象であるウィーン工房への一般的な認知が高まった年であった。展覧会に先立ち、博士論文に本研究課題の成果を加え、2021年7月にウィーン工房に関する単著を出版した。ウィーンでは近代様式が模索されながらも生活世界の根本的変換に向かうデザイン視座の転換は生じなかったが、商業的なブランドイメージの形成、女性たちの主体的な創作活動、ポスト・モダンの視点に通じる装飾の肯定的受容という点に、ウィーン工房の先駆性が指摘されうる。本書はデザイン史の記述対象を拡張する最新の研究動向と連動し、近代デザイン運動の多面性を実証的に明らかにした。 8月のAsian Conference of Design History and Theoryでは、第1次世界大戦期のウィーンの女性デザイナーのファッション領域における生産活動が、当時のジェンダー観のみならず現実的な物資状況や愛国的風潮に規定されていた様相を発表した。 キネティシズム研究については、キネティシズム派の理論、実践、それらへの評価を資料から精査し、今後の現地調査の方向性を整えた。研究内容をまとめた論文は、〈機能と装飾のポリフォニー:交歓するモダン〉展(豊田市美術館他)カタログに掲載される。
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