2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K12876
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 久美子 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (40508503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的親 / 社会的な親子関係 / 仲人親 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、配偶者選択における親の関与について考察するものである。本年度は、現在、親が子どもの結婚に関与を強めてきた背後にあるものについて考察した。具体的には、家族研究に関する学会等に参加しての意見交換、先行研究の整理や、インタビュー調査等で得られた事例の分析を通して行った。 まず、地域社会の中には様々な社会関係が存在してきたが、人は生みの親以外の「親」すなわち、社会的な親を人生のいくつかの重要な節目の場面で立ててきた。そして、配偶者選択においても、生みの親ではなく社会的な親が、重要な役割を果たしてきたといえる。ところが、このような社会的な親が担ってきた仲人親のあり方は、徐々に変化してきた。 戦前生まれの人が結婚適齢期の頃に地域社会の中で独身者に結婚相手を紹介していた仲人でも、すでに社会的な親のような役割を果たしていなかった。すなわちここに、生みの親が子の配偶者選択に積極的に関与せざるを得なくなった状況と、当事者たちの恋愛技術の喪失を見ることができる。本内容と、こうした状況に置かれた独身女性たちの悲しみについては、2019年10月に国際会議で報告を行った。表題は、The deep sorrow of not being able to marry the one you love-Focusing on the“Yanagita Kunio and Japanese Folklore”and its uniqueness である。 また、2020年2月には環境社会学研究会において仲人のあり方について発表を行い、貴重な意見交換ができ、また有益な助言が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前半までに行った研究者との意見交換やインタビュー調査をふまえて、社会的な親について検討を深める予定であった。しかし、本年度は教務委員を担当したため、特に9月以降、次年度の講義の調整業務等で多忙となり、インタビュー調査のための時間を割くことが難しかった。そこで、2月に後期の講義が一段落してからインタビュー調査を行う計画を立てていたが、新型コロナウィルスの感染拡大により出張ができなくなった。そのため、仲人親に関する事例の収集を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新型コロナウィルスの感染状況がおさまれば、できるだけすみやかにインタビュー調査に取りかかり、多くの時間を割きたいと考えている。しかし、インタビューは相手があることなので、相手の方とも相談しながら注意深く進めていきたい。 また、2021年度には、本年度、国際会議において発表を行った内容をまとめて、図書(共著)として出版する予定である。再考が必要な部分もあるため、もう一度事例等を確認して考察を進めていきたい。また他にも、学術雑誌に速やかに投稿すべき配偶者選択に関する研究があるため、インタビュー調査が難しい期間は、これらの原稿執筆に時間をかける。
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Causes of Carryover |
国際会議で発表を行うための旅費として使用する予定であったが、別途国際学会発表の旅費の支援を得ることができたため、その分の支出がなかった。また、春休み期間中にインタビュー調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により実施できなかったため、調査旅費の支出がなくなった。これらが、次年度使用額が生じた一番大きな理由である。さらに、研究を推進するためにいくつかの文献を購入予定であったが、3月に入って年度末、新年度に向けての学内・学外業務が増え、その作業が遅れてしまった。次年度にはすぐに文献を購入し、インタビュー調査が可能になれば、調査の旅費として使用する。
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