2017 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化下の住宅居住者の暑熱適応の効果定量化と限界の把握
Project/Area Number |
17K12882
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中谷 岳史 信州大学, 工学部, 助教(特定雇用) (80469585)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 実態調査 / 暑熱限界 / 熱的快適性 / 住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化問題の取り組みとして、適応策に注目が集まっており、住宅部門では気候変動や熱波から受ける熱ストレス軽減が期待されている。一方で人間の暑熱適応には限界があり、過度な期待は健康リスクの増大になる。そこで本研究は、下記を明らかにした。 ・住宅を対象に実測調査を行い、暑熱環境時の居住者評価・行動を把握する。 ・取得済データ(関西・岐阜)に加えて、地域を追加し、暑熱環境における建物居住者の熱ストレスに対する適応・回避行動を明らかにする。住宅居住者の暑熱適応の効果定量化と限界を把握することは、今後の室内温熱環境設計にとって重要な基礎資料となる。 関西地域の住宅調査では、暑熱ストレスの回避する温熱環境の存在が示唆され、WBGT28~29℃であった。本年度は長野県長野市の住宅居住者を対象に夏季調査を実施し、WBGT28~29℃、35ET*までに大部分の居住者が冷房行動を開始しており、関西地域の結果を支持する傾向が得られた。またWBGT28℃は日本生気象学会基準の厳重警戒領域、35ET*はASHRAE Fundamentalの熱中症の閾値であり、冷房による熱ストレスの回避の上限と近接する温熱環境水準であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温暖地域に属する岐阜県岐阜市の住宅実測調査の既取得データを整理し、次年度以降の論文発表に向けて準備を行った。暑熱限界や熱中症に関する文献収集を行い、国内外の温熱生理や他分野の暑熱限界について知見を整理した。またアジアや中東、アフリカの建物温熱環境実態調査の論文を収集し、整理した。 準寒冷地域に属する長野県長野市の住宅を対象に、実態調査を行い、12戸の住宅から450申告を得た。平成30年度に学会発表し、論文投稿を予定する。
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Strategy for Future Research Activity |
住宅温熱環境の暑熱限界について、文献調査と実態調査でデータを取得する。 実態調査は、関西・岐阜地域に加えて、準寒冷地の長野県長野市を追加した。これらの取得データを整理し、高温環境の主観申告と冷房行動を分析する。 インドなど、日本よりも暑い国における実態調査は、期限内の遂行が困難である為、海外の研究者と連携する方向に変更する。高温環境の地域の研究者と連携し、データを共有・分析して推進を行う。
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Causes of Carryover |
初年度は主に文献収集に費用を割り当てた。海外調査の事前準備を予定していたが、実施が困難であった為、次年度は海外の研究者と連携する際に必要な、測定機器購入や郵送などで予算を使用する予定である。
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