2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K12886
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
斉藤 史恵 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00625254)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 味の余韻 / 酸味 / TI法 |
Outline of Annual Research Achievements |
「味の余韻」は,食品のおいしさを左右する非常に重要なファクターであるが,余韻に寄与する要因やその評価方法は明確になっていない。本研究課題は,味の余韻に食品のもつ緩衝能が関係していると推測し,緩衝能に寄与する成分の解明と官能評価による余韻の数値と緩衝能との関係性を明らかにする。最終的には,緩衝能を指標として味の余韻を数値化することを目標とする。なお,余韻の一つとして酸味の持続時間を本課題では評価することとした。平成29年度は,2つの下記の項目を行った。 1.モデルワイン系での緩衝能寄与成分の同定 3品種(chardonnay,sauvignon blanc,koshu)の市販ワイン合計85本についてpH,滴定酸度,有機酸分析,ミネラル分析等を実施した。その結果,有機酸組成とカリウム濃度に品種差があることが明らかになり,味わいの品種間差に寄与している可能性を推測した。一方で,緩衝能曲線はワインで大きく異なり品種間差よりも製品差の方が大きいと考えられた。また,酸味の持続時間に関係する要因として新たにワインの中和時間に着目した。ワインを口に含むと口中のpHが低下することで酸味を感じ,中和によって再びもとのpHに戻ることによって酸味はなくなる。すなわち,中和に要する時間と酸味の持続時間に関係性があると推測した。様々なワインにNaOH水溶液を一度に加えた際に,中和時間がワインによって異なることがわかった。 2.熟練パネリストの育成と余韻評価の実施 研究室に所属する13名について3段階の訓練を実施した。官能評価方法の設計では,パネルの疲労と測定日による差が生じるのを避けるため,1度に無理なく評価できる試料本数として8本を設定した。koshuワイン8本についてTI法による酸味の官能評価を実施し,現在,緩衝能との関係性を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.モデルワイン系での緩衝能寄与成分の同定について,まずは様々なワインの成分分析を実施した。現在のところ,有機酸組成が重要であることがわかっているがその他にもミネラル組成が関与していると推測している。モデルワイン系での検討は引き続き実施する。2.熟練パネリストの育成と余韻評価の実施について,まずは3段階の訓練を実施した。訓練を積むことにより,酸味の強度を正確に評価できることができたが,13名中1名についてはTI法を習得することができずパネルから排除することとした。「酸味」を評価項目として試料ワインのTI測定を行った。TI曲線から,評価パラメーターとして味の最大強度(Imax)とその時間(Tmax),味の持続時間(Tend),酸味の増加および減少などの複数パラメーターを得ることができた。引き続き,ワインの成分分析値および緩衝能の値と官能評価パラメーターとの間に相関性が見られるか解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
酸味の持続時間に関与するファクターとして緩衝能の他にワインの中和時間にも着目した。これまでの実験でワインによって中和時間に差があることが分かり,引き続き中和時間の差を生じる要因と酸味の持続時間との関係性について検討を行う。官能評価について,パネリストが所属学生であったため,訓練パネリストが卒業してしまったという問題が生じた。そこで,新たに所属した学生に対して官能評価訓練を実施し,熟練パネリストの育成に努める。
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Causes of Carryover |
予定していたガスボンベの購入(ミネラル分析で使用する原子吸光光度計に必要)が年度内に間に合わなかったため、次年度に繰り越すこととした。
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Remarks |
山梨大学ワイン科学研究センター機能成分学研究部門ホームページ:http://www.wine.yamanashi.ac.jp/biofunctional/biofunctional.html 山梨大学研究者総覧:http://nerdb-re.yamanashi.ac.jp/Profiles/337/0033697/profile.html
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Research Products
(2 results)