2019 Fiscal Year Research-status Report
ラクトバチルス属のコリノイド合成能とプロバイオティクス素材としての基礎的検討
Project/Area Number |
17K12889
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
谷岡 由梨 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (30553250)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / リボヌクレオチドレダクターゼ / コリノイド化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンB12(B12)は一部の微生物によって合成され、高等動物へと濃縮、蓄積される。プロピオン酸菌や一部の乳酸菌はB12やシュードB12と呼ばれるコリノイド化合物を合成することが報告されており、細胞内でB12依存性酵素の補酵素として機能している。ヒトでは、B12以外のコリノイドは補酵素として機能しない。しかし、ヒト糞便中にはB12の下方配位子が異なる種々のコリノイドが存在し、腸内細菌が作り出したと考えられる。したがって、腸内細菌はB12やB12以外のコリノイドを利用しているため、B12以外のコリノイドが他の腸内細菌に影響を与え、宿主に保健効果をもたらしていることも推測される。 乳酸菌はプレバイオティクス素材として利用されており、ゲノム情報が公開されている乳酸菌の中には、B12合成経路やB12依存性酵素遺伝子と相同性を有する種が存在しているが、プレバイオティクスとして利用されている乳酸菌は少ない。データベース検索により、B12合成経路やB12依存性酵素遺伝子と相同性を有する種を明らかにし、B12生成量等が人工消化系における菌の生残性に影響するか検討した。乳酸菌の中には、B12依存性リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)のみ、B12依存性RNRとB12生合成経路の一部を有する種、どちらも有しない種が存在していた。B12合成経路を有し、B12依存性RNRのみを有する種について、B12依存性RNRの測定を行った。RNRはリボヌクレオチドからデオキシリボヌクレオチドへの変換を触媒しておりDNA合成に関与するため、対数期に酵素活性が高いと考え、その細胞の酵素活性の測定を試みたが、酵素活性の検出には至らなかった。次に、予備実験より、コリノイドが生成されていると示唆された乳酸菌を用いて、生育に伴うコリノイド量を検討したところ、対数期から蓄積され始め、定常期までに微増していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
KEGGデータベース上に存在する乳酸菌のB12依存性、非依存性リボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)遺伝子、B12生合成経路遺伝子と相同性を有する遺伝子が存在するか調べた。その結果、B12依存性と非依存性RNR遺伝子を有する種は7種、B12非依存性RNRのみを有する種は5種、B12依存性RNRのみを有する種は1種であった。また、B12依存性RNRを有する種の大半にB12生合成経路の一部と相同性をもつ遺伝子が存在していた。 L. ginsenosidimutansゲノム上にはB12依存性RNR遺伝子とB12生合成経路遺伝子にそれぞれ相同性を持つ遺伝子が存在する。本菌のB12依存性RNRを測定するために、生育の対数期の細胞を用い、比色定量法により測定したが、酵素活性を検出することはできなかった。本法による乳酸菌のRNR活性は報告されていたため、当初順調に測定が可能と考えられたが、本菌の活性が低いのか、検出できなかった。今後は発現量を検討していく予定である。さらに、研究室移転等により、培養が中断されたこともあり進捗が遅れた。 L.collinoides は、データベース上では、B12依存性RNRや合成経路を持つかは不明であったが、予備検討よりコリノイドが生成されていると示唆されたため、生育に伴うコリノイド量について検討したところ、対数期から蓄積され始め、定常期まで微増していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
乳酸菌の中に、B12合成経路を有する種やB12補酵素を有する種、また、どちらも持たない種などが混在しており、生物学の観点から非常に興味深いと考える。また、ヒト糞便中にはB12の下方配位子が異なる種々のコリノイドが存在し、腸内細菌が作り出したと考えられる。したがって、腸内細菌はB12やB12以外のコリノイドを利用しているため、B12以外のコリノイドが他の腸内細菌に影響を与え、宿主に保健効果をもたらしていることも推測される。 今後は、コリノイド合成、非合成乳酸菌の人工消化系を用いた生残性の検討、B12酵素の発現量等について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用が生じた理由は、当初予定していた研究計画の一部しか遂行することができなかったためである。 (使用計画)これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせて、人工消化に必要な試薬等の消耗品費として使用することを計画している。
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