2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K12893
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Research Institution | Saitama Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
成澤 朋之 埼玉県産業技術総合センター, 食品・バイオ技術担当_北部, 主任 (60642676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小麦粉 / GC/MS / 揮発性成分 / 酵素活性 / LOX / 脂肪酸組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
商用粉を用いてGC/MSによる揮発性成分分析を行った。その結果、小麦粉、生地、ゆで麺といった加工工程がそれぞれ異なる揮発性成分特性を示した。小麦粉では主に炭化水素類の寄与が大きく、生地やゆで麺では主にアルデヒド類やケトン類の寄与が大きかった。一部アルデヒド類やケトン類は生地において寄与が大きくなった後、ゆで麺にて寄与が小さくなった。アルデヒド類やケトン類の増加は加水後の生地で起きていることから、酵素による酸化によるものであると考えられた。また、この変化は農林61号の2等粉で最も大きい結果となった。これらの化合物は、加水によりリポキシゲナーゼ(LOX)活性が発現することで不飽和脂肪酸が酸化され過酸化脂質が生成し、これが開裂することによって生成しているものと考えられた。このLOX活性は農林61号2等粉において顕著に高い値を示した。また、1等粉より2等粉において脂質含有量が多く、特に不飽和脂肪酸が多いという結果であった。つまり、2等粉ではアルデヒド類などの原料となる不飽和脂肪酸や酸化を触媒するLOXが多く、アルデヒド類の生成量が多くなったものと考えられた。 製粉工程においてローラーや篩の種類によって取り分けられるストリーム粉を用いることにより、小麦粉の灰分と揮発性成分や酵素活性との関連性を検討した。ストリーム粉を生地調製し、揮発性成分を分析した結果、揮発性成分が全体的に小麦粉の灰分の増加と伴い増加する傾向にあった。また、農林61号はストリーム粉においても同様に高いLOX活性を示した。他の品種と比較して、同等の灰分値を示していてもLOX活性が顕著に高いことから、農林61号という品種は、特異的にLOX活性が高いということが示唆された。これらのことから、揮発性成分分析において農林61号は、種皮側の成分を多く生成していた原因は、その特異なLOX活性によるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではこれまでに、小麦粉、生地、ゆで麺という麺加工工程において揮発性成分分析を行った結果、小麦粉へ加水することによりLOX等の酵素活性が発現して揮発性成分を生成していることを解明した。しかし、その際に起きていると予想される副反応について、当初予定していたよりも反応が複雑であり、その検討が不十分である。よって、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
小麦LOXには複数のアイソザイムが確認されており、それぞれ生成する過酸化脂質の酸化部位が異なる。この酸化部位が異なることにより、生成されるアルデヒドの鎖長が異なってくる。農林61号においてLOX活性が顕著に高かったが、これが特定のLOXアイソザイムが多いのか、総LOX量が多いのか不明であった。このLOXアイソザイム組成を陽イオン交換クロマトグラフィーにより分析し、揮発性成分への影響を検討する。また、このLOXアイソザイム組成やLOX活性の高さについて、また窒素施肥によるLOX等の発現分子の違いについて、mRNA発現量の側面からも検討を行う。
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Causes of Carryover |
起きていると予想される副反応について、当初予定していたよりも反応が複雑であり、その検討のため研究が遅れている。この副反応について、LOXアイソザイムおよびmRNA発現の2つのアプローチで検討を行っていく。
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Research Products
(3 results)