2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸上皮がん細胞の増殖を抑制する牛乳中の細胞外小胞の解析
Project/Area Number |
17K12899
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鶴田 剛司 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90728411)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛乳 / 細胞外小胞 / 大腸がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、牛乳中に含まれる細胞外小胞(牛乳EV)が大腸がん細胞の増殖に及ぼす影響を検証することである。平成29年度までの検証結果から、牛乳EVがヒト大腸がん細胞株の増殖活性を抑制することが明らかとなっていたため、平成30年度はその作用機序やin vivoでの検証を実施した。具体的には、①牛乳EVが大腸がん細胞の細胞周期の進行に及ぼす影響、②牛乳EV中のmiRNA発現解析、③大腸がんモデルマウスへの牛乳EVの投与実験の3つの試験を実施した。 ①の試験の結果、牛乳EVは大腸がん細胞株HT29の細胞周期に作用し、S期(DNA合成期)の細胞の割合を有意に減少させ、G1期(DNA合成準備期)の細胞の割合を有意に増加させた。この結果から、牛乳EVがHT29の細胞周期に作用し、G1期からS期への移行を阻害していることが示唆された。 ②の試験では、34種類の大腸がん細胞の増殖に関わるmiRNAの牛乳EV中の発現量を評価した。その結果、10種類のmiRNAが牛乳EV中で検出され、そのうちの7種類は細胞周期の進行の阻害に関わるmiRNAであった。この結果から、牛乳EV中のmiRNAの作用により大腸がん細胞の細胞周期が阻害されることで細胞増殖が抑制されていることが示唆された。 ③の試験では、薬剤誘導した大腸がんモデルマウスに牛乳EVを3か月間投与した。その結果、大腸の腫瘍数や大腸の組織スコアは牛乳EVの投与の有無によって差がなかった。in vitroとin vivoで結果が違った理由として、動物種の違いや牛乳EVの投与濃度が原因として考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
牛乳EVがヒト大腸がん細胞の増殖を抑制する機序の検証は順調に進んでいる。来年度実施予定であった牛乳EV中のmiRNA発現解析を平成30年度に実施済みであるので、来年度はさらに詳細に機序の検証を進める予定である。想定に反する実験結果として、モデル動物への牛乳EVの投与実験の結果と細胞実験で得られた結果が一致しなかったことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は①ヒト大腸がん細胞株の増殖の抑制に関与する牛乳EV中のmiRNAの特定、②牛乳の殺菌方法が牛乳EVの抗がん作用に及ぼす影響、③ウシの品種が牛乳EVの抗がん作用に及ぼす影響の3つの項目について検証を進める。 ①の研究では、昨年度までに牛乳EV中で発現を確認したヒト大腸がん細胞株の細胞周期に作用する7種類のmiRNAのうちがん細胞の増殖抑制に寄与しているmiRNAを特定する。具体的には、それぞれのmiRNAに対する阻害剤を牛乳EVとともに細胞に添加し、細胞増殖活性を評価する。 ②の研究では、ホルスタイン牛より搾乳した無殺菌の牛乳、低温殺菌牛乳、超高温殺菌牛乳よりそれぞれ牛乳EVを回収し、ヒト大腸がん細胞株の細胞増殖活性に及ぼす影響を検証する。本研究により、牛乳の殺菌方法が牛乳EVの抗大腸がん活性に及ぼす影響を検証することができる。 ③の研究では、ホルスタイン牛乳およびジャージー牛乳よりそれぞれ牛乳EVを回収し、ヒト大腸がん細胞株の細胞増殖活性に及ぼす影響を検証する。本研究により、日本の2大乳用牛品種であるホルスタインおよびジャージー間で牛乳EVの抗大腸がん活性に違いがあるかを明らかにすることができる。
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Research Products
(10 results)