2017 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンリガーゼによるNASH発症抑制機構の解明
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17K12901
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安倍 知紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00736605)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 食事性脂肪肝 / Cbl-b / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
食事性脂肪肝が進展すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症する。NASHは、肝臓がんや肝不全の発症を介して、生命を脅かす重大な疾患である。しかし、NASHの発症メカニズムには不明な点が多く、有効な治療法や予防法が未だに開発されていない。本研究の目的は、免疫担当細胞の1つであるマクロファージに着目し、NASHの新たな発症メカニズムを明らかにすることである。平成29年度は、マウスにNASHの原因となる食事性脂肪肝を発症させ、以下の検討を行った。 (1)食事性脂肪肝におけるマクロファージの活性化 ユビキチンリガーゼCbl-b遺伝子欠損マウスの肝臓において、高脂肪食により食事性脂肪肝を発症させると、マクロファージ由来の炎症性サイトカイン発現量が増大することを明らかにした。このことから、Cbl-bはNASH発症において、抑制的に働くことが示唆された。マクロファージにおけるCbl-bの炎症シグナル伝達の抑制について、詳細な分子メカニズムの解析は平成30年度に引き続き行っていく。 (2)食事性脂肪肝におけるCbl-bタンパク質発現量 高脂肪食を摂食させることで発症させた食事性脂肪肝により、マウス肝臓においてCbl-bタンパク質の発現量が約1.2倍に増大することを見出した。また、長時間にわたる絶食のような急性期の脂肪肝においても、Cbl-bタンパク質量が増大することを明らかにした。今後は、肝臓におけるどの細胞種においてCbl-bが増大しているのか、免疫組織化学染色などを用いて明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りまで進めることができた。計画していたノックアウトマウスを用いた実験はほぼ完了しており、おおむね順調に進展したと判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、下記の項目について研究を遂行する。 (1)NASHモデルマウスにおけるCbl-bの生理的意義の検討。肝臓よりマクロファージを単離し、NASH発症によりCbl-b発現量が変動するか検討する。野生型マウスにおいて、Cbl-bを強制発現またはノックダウンし、NASH発症に影響があるか確認する。 (2)マクロファージにおけるCbl-bによる炎症性サイトカイン発現抑制の分子メカニズムの検討。単球細胞株RAW264.7細胞を用いて、Cbl-bによるマクロファージ活性化抑制メカニズムを分子レベルで明らかにする。とくにToll-like receptorの下流のシグナル伝達について、重点的に検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、平成29年度に行う予定であった動物実験の一部を平成30年度以降に行うよう変更したため、その分の使用予定額が次年度に繰り越されることとなった。繰り越した研究費については、Cbl-bの強制発現やノックダウンのための核酸試薬の購入や、動物の飼育費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)