2019 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンリガーゼによるNASH発症抑制機構の解明
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17K12901
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安倍 知紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00736605)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 食事性脂肪肝 / Cbl-b |
Outline of Annual Research Achievements |
生体リズムの乱れによる脂肪肝発症における複数のユビキチンリガーゼの役割を明らかにするために、マウスを用いて検討を行った。2019年度は、食事時刻を乱したマウスにおける脂肪肝を疾患モデルとし、発現が変動するユビキチンリガーゼをリアルタイムPCRとウェスタンブロッティング法にて探索し、さらに生理的意義まで解析を行った。食事時刻を乱したマウスにおいて、当初予想していなかった骨格筋萎縮が引きおこされることを見出した。本来、マウスがほとんど摂餌しない時間帯である非活動期のみに給餌すると、血中IGF-1の低下を介して筋萎縮や握力の低下が誘導されることを明らかにし、論文として発表した。 食事時刻の乱れによる血中IGF-1の低下は、脂肪が過剰に蓄積した肝臓や骨格筋においてIgf-1遺伝子発現が低下することが原因であった。肝臓でのIgf-1遺伝子発現は、成長ホルモンシグナルにより誘導され、骨格筋では主にSTAT5により誘導されることが知られている。この知見をふまえ、発現変動するユビキチンリガーゼを探索したところCbl-b以外にも複数のユビキチンリガーゼの遺伝子発現が変動することを見出した。タンパク質レベルでの解析を行うと、遺伝子レベルと同様に変動するものとして、2つ(RING型とSCFユビキチンリガーゼ複合体にかかわる)のユビキチンリガーゼを脂肪肝形成にかかわると考えられる候補として同定できた。どちらもこれまでに脂肪肝にかかわるといった報告はない。発現調節機構について検討した結果、活動期に絶食することが引き金となって遺伝子発現量が増加することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
食餌性脂肪肝モデルである摂餌時刻を乱したマウスの肝臓を用いた解析において、当初予想していなかったユビキチンリガーゼの関与を示唆する結果が得られたので、このユビキチンリガーゼについても脂肪肝における生理的意義を検討することになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
食事時刻を乱した脂肪肝モデルマウスにおいて同定したユビキチンリガーゼの生理的意義を検討し、論文にまとめていく。
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Causes of Carryover |
食餌性脂肪肝モデルである摂餌時刻を乱したマウスの肝臓を用いた解析において、当初予想していなかったユビキチンリガーゼの関与を示唆する結果が得られたので、新たに同定したユビキチンリガーゼと肝臓への脂肪蓄積との関係を明らかにする。費用は実験に用いる試薬、物品の購入および論文投稿費に使用する予定である。
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