2017 Fiscal Year Research-status Report
肥満誘導性炎症を抑制する麹成分の同定とその生成機構の解明
Project/Area Number |
17K12902
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
神戸 果優 (奥津果優) 鹿児島大学, 農水獣医学域農学系, 特任助教 (60578433)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 麹 / 肥満 / 炎症 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去のマウスを対象にした実験において,「麹」には抗肥満作用やインスリン抵抗性改善作用があることがわかっているが,そのメカニズムは今のところ不明である.近年肥満に伴うインスリン抵抗性には脂肪組織の炎症が関与することが報告されており,麹の抗肥満効果は炎症の抑制を介した作用であることが示唆される.そこで本研究は,主に培養細胞を用いた肥満に伴う炎症モデルを用いて,麹の抗炎症作用の解明及び抗炎症成分の同定を試みた. 平成29年度は,マウスマクロファージ細胞 (RAW264細胞) にLPSもしくはパルミチン酸を曝露することで炎症を誘導し,麹抽出物が炎症性メディエーター産生量に与える影響をリアルタイムPCR及びELISAにより調べた.その結果,麹抽出物はLPS誘導性炎症を抑制せず,パルミチン酸誘導性の炎症を特異的に抑制することが分かった.さらに炎症性メディエーターの上流にあるタンパクのリン酸化体の発現量の変化をウェスタンブロッティングにより調べたところ,麹がパルミチン酸によるp38MAPKのリン酸化を特異的に抑えていることが明らかになった. 続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて,麹に含まれる抗炎症成分を分画し,各画分の抗炎症作用を調べた.その結果,クロロホルム画分 (中性脂質画分),アセトン画分 (リン脂質画分) の順に活性が高く,メタノール画分 (糖脂質画分) には活性が見られないことが分かった.一方,これまでに糖尿病の予防効果などが報告されている奇数遊離脂肪酸は,製麹過程で10倍程度に増加するものの,今回の炎症モデルにおいては抑制効果を示さなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は概ね順調に経過し,パルミチン酸誘導性炎症に対する麹の特異的な抑制効果に関する論文は現在作製中であり,間もなく投稿できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は活性成分の分画をさらに進め,抗炎症成分の同定後はその生成メカニズムを調べる予定である.そのために原料である米,麹菌の菌糸または胞子中の抗炎症成分含量を定量する.また製麹時における麹中の抗炎症成分の経時変化を調べるとともにLC-MS/MSを利用した代謝物解析を行う.また,抗炎症成分を増強する麹の製造法の開発を行う.麹原料,麹菌のスクリーニング,及び製麹条件 (温度,湿度,水分) を検討する.
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Causes of Carryover |
当初パルミチン酸溶液の調製のため、サンプル密閉式超音波破砕装置の購入を予定していたが,今年度の実験ではすでに調製していたパルミチン酸溶液を使用したため,購入の必要がなかった.来年度必要に応じ購入予定である.
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Research Products
(1 results)