2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病治療の新たなターゲットとなるNa+吸収輸送体の輸送機構の解明
Project/Area Number |
17K12904
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石塚 典子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30440283)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 消化管 / 輸送体 / 食塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)の患者は、人口構成の高齢化に伴い増加が予想され、更にCKDの病態が進行すると、血液透析患者が増加することが懸念されている。このため、CKDが重症化に至らない為の進行予防策を講じることが喫緊の課題である。CKDの治療においてミネラル代謝異常を管理することが予後を改善すると考えられている。最近CKDのミネラル代謝異常の治療薬として腸管のNa+吸収輸送体であるNa+/H+交換輸送体(NHE)3の抑制剤が注目を浴びている。しかし、この薬剤のターゲットであるNHE3のイオン輸送機序と他のミネラルの吸収機序との関係は十分に検討されていない。本研究ではNHE3分子が、どのような機構でNa+を輸送しているかを明らかにし、更に薬剤の作用機序を明らかにすることにより、今後のNHE3をターゲットとする治療の基礎研究とする。NHE3阻害剤は鏡面構造を有しており、薬剤の結合部位が2カ所あると予測されることや、NHE3活性調節の一つとして、NHE3は二量体を形成して機能する機序が提唱されていることから、NHE3活性化の際に二量体の形成が必要か否かを検討することを目的とした。また、NHE3阻害剤は腸管からのNa+吸収を抑制することにより、同時に腸管K+分泌を亢進させることが報告されている。K+の腸管排泄は主に傍細胞経路を介するとされているが、詳細はあまりよく知られていない。そこで、傍細胞経路の陽イオン透過性が低下しているClaudin15欠損マウスを用いて腸管のK+排泄について検討した。小腸においてはClaudin15欠損マウスにおいてK+輸送が低下する傾向が見られ、傍細胞経路を介して排泄される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではNHE3活性化の機序として二量体形成に着目し、培養細胞系を用いて検討するため、当初計画では初年度に、NHE3のイオン輸送活性を欠失した変異体の作成及び、変異体の輸送機能の確認までを行う予定であった。しかし、正常なNHE3の一過性発現により一部の細胞に輸送活性を確認できたが、発現効率が低いため、変異体との比較には至っていない。現在、培養細胞にNHE3を遺伝子導入し、安定発現細胞株の樹立と、安定的なNHE3活性の測定を試みている。培養細胞を用いた検討が十分に進まないことが予想されたため、マウスから単離した大腸クリプトを用いた検討を始めた。更に、K+の腸管排泄について、動物レベルでの検討を行うこととした。小腸においてはClaudin15欠損マウスにおいてK+輸送が低下する傾向が見られ、傍細胞経路を介して排泄される可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた検討が十分に進まないことが予想されるため、昨年度からマウスから単離した細胞での検討を始めている。NHE3の特異的阻害剤を入手し、測定された機能活性がNHE3によるものであることを確認する。また、エレクトロポレーションにより生体の腸管に遺伝子導入できることが報告されているため、これを用いて、輸送活性を欠失した変異体NHE3を共発現させた影響を検討する予定である。また、K+輸送に関しては、Claudin15が関与している可能性が示されたため、Claudin15 欠損マウスを用いて、摂食実験や、小腸及び大腸の腸管粘膜標本を用いた電気生理学的検討を行う予定である。
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