2017 Fiscal Year Research-status Report
リン供給源の違いがリン体内代謝動態に及ぼす影響の検証-CKD患者への応用に向けて
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17K12913
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
上西 梢 近畿大学, 農学部, 契約助手 (40709523)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / リン / たんぱく質 / 食事療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎機能の低下している慢性腎臓病(CKD)患者では、摂取したリンを尿として排泄できないことから、余剰なリンが体内に蓄積し高リン血症を招くことがある。この高リン血症は、心血管イベントなどの致命的な合併症を引き起こすことから、積極的なリン管理が必要であるが現在のところリン制限の実施は透析導入以降に留まっている。一方で、CKDのより早いステージからリンを制限することがCKD患者の生命予後改善につながる可能性も報告されている。しかしながら食品中のリンは、たんぱく質と結合して存在していることが多いため、リンのみを制限することは容易ではない。そこで本研究計画では、新たな食事性リン制限の方法として、食品中のリンの存在様式並びに吸収率の違いに着目し、ヒトを対象とした臨床研究を行うことで、その効果の検証を行った。一般的に、動物性食品に含まれるリンの生物学的利用率は40~60%と高く、植物性食品に含まれるリンは20~40%と低いことが知られていることから、総カロリーおよび炭水化物・脂質・タンパク質・リン・ カルシウムを同程度に調整したうえで、リン供給源を動物性食品と植物性食品で極端に比率を変え、試験食(植物性食品由来のリンが70%(植物性70%)あるいは動物性食品由来のリンが70%の食事(動物性70%))を作成した。対象者は、腎機能の正常な健常者とし、無作為に2群に分け、試験食を提供し、摂取後の血中リン濃度並びに尿中リン濃度の測定を行った。その結果、植物性70%群の食後血中リン濃度の上昇が、動物性70%群に比べ穏やかであった。さらに、食後尿中リン排泄量は植物性70%群のほうが動物性70%群に比べて有意に少なかったことから、植物性食品に含まれるリンは体内に吸収されにくく、血中リン濃度の上昇を抑制できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の予定通りに計画は進展していると思われる。 当初の予定通り、健常者を対象とした臨床研究が実施できており、CKD患者への応用に向けた基礎的データの収集が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により、健常者において植物性食品由来のリンを多く含む食事は、食後の尿中リン排泄が少なく、食後血中リン濃度の上昇を穏やかにすることが明らかとなった。そこで今年度は、植物性食品由来のリンの多い献立を精査し、ある特定の食材が得られた有効性に影響を及ぼしているかを検証するために、特定の食材の比率が極端に多い食事や特定の食材を単独で摂取した際のリン体内代謝動態への影響を検討する。また、CKD患者への応用に向けて、慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版に準拠した献立作成を開始する予定である。
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