2017 Fiscal Year Research-status Report
新規抗うつ薬創製を目指した末梢性BDNF産生促進作用を有する食品成分の探索
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17K12915
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
中島 健輔 長崎国際大学, 薬学部, 助手 (90762162)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新規抗うつ薬 / 末梢性BDNF産生促進物質 / 食品成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
うつ病は重大な健康被害をもたらす精神疾患であるが、有効な予防法はなく、既存の抗うつ薬には効果発現まで時間がかかるという問題点がある。さらに、既存薬の奏功しない症例も多い。従って、うつ病の予防法の確立および新規抗うつ薬の開発は喫緊の課題である。 近年、神経細胞の生存・成長に関与する脳由来神経栄養因子(BDNF)の減少がうつ病の発症につながるという説が注目されている。BDNFは「脳由来」と呼称されているにも関わらず、脳だけでなく末梢組織の細胞でも産生される。さらに、BDNFは血液脳関門透過性を有している。これらのことから、末梢組織の細胞におけるBDNFの産生促進は脳内BDNF濃度の上昇をもたらし、うつ病の予防および改善につながると考えられる。そこで、末梢組織由来細胞を用いたBDNF産生促進物質の探索アッセイ系を構築し、BDNFの産生を促進する食品成分を見出すことを目的として研究を行った。 平成29年度は、6種類の末梢組織由来細胞についてBDNFの産生能を検討し、その中で最もBDNF産生能が高かったヒト肺がん上皮細胞A549を用いてBDNF産生促進物質の探索アッセイ系を構築した。さらに、構築したアッセイ系を用いて、葉酸およびルチンのBDNF産生促進作用を見出した。さらに、葉酸のBDNF産生促進作用の機序の検討を行った結果、葉酸によるBDNF産生促進作用は、BDNF産生に関与するプロホルモン転換酵素(furin、PC5、PC7、PACE4)の遺伝子発現量の変化によるものではないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究目標は、①末梢組織由来細胞を用いたBDNF産生促進物質の探索アッセイ系の構築、②構築したアッセイ系を用いてBDNF産生促進物質を見出すことであった。これらの目標を達成することができたため、これまでのところ、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
A549細胞にてBDNF産生促進作用を示した食品成分をうつ病モデルラットに投与し、抗うつ作用を調べる。また、ラットの血中および海馬中BDNF濃度に及ぼす末梢性BDNF産生促進物質の影響についても検討を行う。なお、in vitroにおける末梢性BDNF産生促進物質のスクリーニングは平成30年度も引き続き行う予定である。
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