2017 Fiscal Year Research-status Report
食事価格の変動が食品構成に及ぼす影響の解明:最適化法を用いたシミュレーション研究
Project/Area Number |
17K12917
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
大久保 公美 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80407577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 最適化法 / 食事価格 / 食品構成 / 栄養素摂取量 / 国民健康・栄養調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度は、最適化法を用いた食事価格のシミュレーションのための数学的モデルを開発し、食事価格の変動が食品構成に及ぼす影響を検討することを目的とした。 平成25年度国民健康・栄養調査において、食事記録の有効なデータが得られた20-69歳男性1733名、女性2002名の既存データを活用し、食事最適化法を用いて、性・年齢区分別に各栄養素の摂取基準を満たし、かつ現在の食習慣を大きく変えない(目的変数:各食品群摂取量の現状値と最適化値の差の絶対値の和が最小となる)1日の食品構成、つまり最適化された食品群ごとの重量と食事価格を算出した。制約条件として食事価格を組み入れ、現在の食事価格から10%ずつ減らしていくことによって食事価格の変動と食品構成の関連を検討した。その結果、観察された現在の食事価格より10%まで減らした場合、男女ともに年齢の若い20-29歳、30-49歳の群では、最適解は得られなかった。観察時と現在の食事価格を維持したうえで最適化した後の食品構成を比較したところ、男女共通して穀類、野菜(緑黄色、その他)、卵類、大豆製品の大幅な増加、塩味調味料、砂糖・菓子類、アルコール飲料、エネルギーを含まない飲料の大幅な減少が見られた。一方、50-69歳の群では男女ともに現在の食事価格より20%まで減らしても栄養基準を満たす食品構成が得られた。食事価格の低下とともに、穀類、緑黄色野菜、大豆製品の大幅な増加、魚介類、果物、塩味調味料、砂糖・菓子類、アルコール飲料、エネルギーを含まない飲料の大幅な減少が見られた。栄養基準を満たすために必要は食事価格の許容幅は年齢によって異なり、特に若い年齢群おいて多くの食品の摂取量と価格を増やす必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、国民健康・栄養調査データの利用申請に必要な時間を考慮して、当初の予定通り解析を進めている。しかし最適化法を用いた食事価格のシミュレーションの際に、より安定した数学モデルを確立するための課題が十分に解決できていない。次年度は、これらの課題を優先して研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、最適化法を用いた食事価格のシミュレーションを行ったが、統計モデルの妥当性や解析に使用したデータの質、食品の分類方法や制約条件によって結果が大きく変わる。そのため、食品の分類方法や制約条件の見直しを行うとともに、他の集団のデータセットを用いた同様の解析を行うことによって、より安定した解析手法の確立を図る。
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Causes of Carryover |
最適化法を用いた解析手法の確立のために、当該研究の豊富な経験と知識を有するNicole Darmon教授(仏国立保健医学研究機構、マルセイユ)を訪問する予定であったが、自身の産休明けの勤務状況の変化と互いのスケジュールが合わず、年度内の研究会議開催が不可能となったため、旅費に大幅な使用額の差が生じた。研究会議、学会での発表および論文投稿に関わる費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)