2017 Fiscal Year Research-status Report
医学標本館における拡張現実感を用いた学習支援システムの開発
Project/Area Number |
17K12944
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
杉浦 篤志 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (90755480)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 拡張現実技術 / 医学教育 / 学習支援 / ウェアラブル機器 / ジェスチャ認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
人体構造に関する知識は医学教育の基礎知識として必要不可欠である。献体を用いた解剖による医学教育は社会状況や倫理的問題に十分配慮する必要があり、容易に提供できない。実物の臓器による医学教育を提供するために、医学標本を用いる方法がある。研究代表者の大学には医学標本館があり、ホルマリン液浸の医学標本が展示されている。学生は医学標本を通して実物の臓器の構造や質感を見る貴重な経験をし、医学知識を深めることが可能である。しかし、見学時の標本の説明は、各標本の前に置かれたラベルと医学標本館対応の教職員の解説に頼っており、各見学者の知識レベルや専門分野の差異に合わせた説明は十分であるとは言えない。そのため、医学標本での効果的な学習を目指して、拡張現実感(AR: Augmented Reality)を利用した医学標本における学習支援システムの研究を進めてきた。 本研究では見学者に適応的なARによる医学標本の学習支援システムの実現を目指し、以下の3つの機能を追加することを目的とする。 1.光学透過型ヘッドマウントディスプレイを採用し、標本の質感を損なわずジェスチャ操作によるAR環境を構築する。 2.システムの操作履歴や学習履歴を蓄積して見学者の専門性や知識レベルを推定し、見学者の専門性や知識レベルに合わせたAR情報の提示および見学ルートを推奨できるようにする。 3.様々な形状やサイズの標本に対応するために複数のマーカを設定し、複数マーカによって提示される情報を自然に往来できるようにする。 初年度は、プロトタイプシステムを用いて被験者によるユーザビリティおよび教育的評価を実施した。それらの評価結果よりシステムの有効性・問題点を確認することができた。また、光学透過型ヘッドマウントディスプレイを導入し、AR情報の自動配置やジェスチャ操作機能の改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、学習支援システムのプロトタイプを用いて被験者実験によるユーザビリティ評価と教育的評価を実施した。ユーザビリティに関する評価結果からヘッドマウントディスプレイを用いたシステムが最も有効であることを確認し、画面解像度やサイバーシックネスの問題も明らかになった。教育的評価においては山梨大学医学部の先生方に監修を受けた医学標本の知識問題やアンケート調査から教育に関する評価を解析した。その結果、AR情報による学習支援が有効であることが確認できた。 また、光学透過型ヘッドマウントディスプレイをシステムへ導入し、AR情報の自動配置の機能を追加し、システムの改良を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
AR情報の自動配置機能の問題点を解決していく方針である。また、医学標本に関するARコンテンツを増加させ、見学者の専門性や知識レベルに合わせたAR情報の提示および最適な見学ルート機能の実現を目指す。機械学習を用いてユーザの操作や学習履歴の情報からユーザの知識レベルを判断し、それに合わせた情報コンテンツを提供するシステムへ改良を行う予定である。改良後のシステムを用いて被験者による教育的評価を行い、学習効率及び能動的学習への影響を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
タブレット情報端末を2台手配する予定であったが、1台でシステムの開発を進めることが可能であったため、追加の1台は手配しないこととした。 被験者実験を実施するにあたり、実験を補助する大学生および被験者に対して謝金を支払う予定である。
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