2017 Fiscal Year Research-status Report
Engagement Analysis of Hi-speeded Educational Materials Evidenced by Biological Information
Project/Area Number |
17K12952
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長濱 澄 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (50779270)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 映像教材 / 高速提示効果 / 事象関連電位 / 瞳孔面積 / 認知負荷 / 注意配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,まず,映像教材の高速提示効果に関する基礎知見について実験的に検討した.Felderの学習スタイル尺度(Felder & Henriques 1995)によって分類されたVisual群20名とVerbal群20名に対し,映像教材を1倍速と2倍速の提示条件で提示した.その結果,映像教材の高速提示による認知負荷は,聴覚的な認知負荷を増大させる可能性が示唆された.また,映像教材によって生じる認知負荷の度合いは学習者の特性によって異なる可能性が示唆された. 次に,学習者の脳波データ(事象関連電位のP300の振幅: P3振幅)に関する研究として,振動プローブ刺激に対するP振幅を指標に,映像コンテンツの提示速度と注意配分の関連性について実験的に検討した.その結果,条件別のP3振幅に関して,視聴なし条件,1倍速条件,2倍速条件の順に低い値を示したことが明らかになった.重光ら(2007)は,映像の視聴時における注意配分量が大きくなると,P300振幅が低下することを示した.このことを踏まえると,映像教材の視聴時における注意配分量は,1倍速条件に比べて,2倍速条件の方が大きくなる可能性が示唆された. 続いて,学習者の瞳孔面積の変化に関する基礎研究として,高速映像コンテンツの反復提示効果を実験的に検討した.その結果,高速映像コンテンツの反復提示において,2度目の視聴時における瞳孔面積は,1度目の視聴時における瞳孔面積に比べて,有意に小さいことが明らかになった.村井ら(2006)によれば,瞳孔面積の大きさと動画に対する興味度及び注意配分量は相関関係にあると述べている.このことを踏まえると,学習者は,同一の映像コンテンツを反復して視聴した場合,興味度及び注意配分量が小さくなる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度において,まず,実験用映像教材の作成及び映像教材の高速提示効果に関する基礎実験を完了させた.その際,実験映像のコンテンツや基礎実験における実験デザインは,米国マサチューセッツ工科大学におけるKlopher教授との打ち合わせによって決定した.また,複数の基礎実験によって,複数の実験用映像教材の等質性の確認ができた他,映像教材の高速提示効果に関する基礎知見が得られた.これらについて,学会発表を複数回行い,論文としてまとめた.次に,P3振幅を指標とした映像教材の高速提示効果の検討を完了させた.得られた知見は,学会発表した他,論文としてまとめ,現在,投稿中である. しかしながら,瞳孔面積変化を指標とした映像教材の高速提示効果の検討がやや遅れている.その理由として,本実験条件において,当初想定した方法によるアーティファクトの除去が効果的に行えず,実験デザインを見直すことに時間を費やしたことが挙げられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,進捗が遅れている瞳孔面積変化を指標とした映像教材の高速提示効果の検討を早急に進める.対策として,瞳孔面積データにおけるアーチファクトの除去方法について広く情報取集する他,それに見合った実験計画となるよう,実験デザインを再検討する.瞳孔面積変化を指標とした映像教材の高速提示効果の検討が完了すれば,P3振幅との関連性を検討することもすぐに可能になる.また,これまでに得られた知見を基に,高速提示用映像教材開発・活用に関する指針をまとめ,反転授業における予習教材としての実践準備を進める.
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由として,実験計画の再考により,実験における謝金額を変更し,実験参加における謝金について他の費用から支出したことが挙げられる.次年度は,今年度において得られた知見を成果として発表していくこと,また,瞳孔面積の変化に限らず,生体情報におけるアーチファクトの除去方法に関する情報について,広く収集していくことが予想されるため,出張費等に計上することを計画している.
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