2018 Fiscal Year Research-status Report
メディア分析による萌芽的科学技術のリアルタイム・テクノロジーアセスメントの研究
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17K12956
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
標葉 隆馬 成城大学, 文芸学部, 准教授 (50611274)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生医療 / 国際比較 / 意識調査 / バイオテクノロジー / メディア言説 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速に発展するヒトゲノム研究・再生医療などの萌芽的科学技術では、その倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の発生もまた多様化し、社会的な議論を必要とする。しかしながら、ELSIを巡る社会的な関心の所在をいかに探索し、また社会的な議題として構築していくのか、その議題探索の在り方と理論的枠組みにはまだ課題が残されている。そこで本研究では、Guston & Sarewitz(2002)が論じるリアルタイム・テクノロジーアセスメント(RTTA)の議論を補助線としつつ、ヒトゲノム研究ならびに再生医療を事例として、定量的・定性的なメディア分析を活用した「早期の警鐘とコミュニケーション」の在り方を検討することで、萌芽的科学技術を巡る社会的議題の探索と構築に関わる課題を明らかにする。 萌芽的科学技術の例としてヒトゲノム研究ならびに再生医療を巡るマスメディアの言論動向について、数量化Ⅲ類分析や共語ネットワーク分析を用いて社会的フレーミングの所在と時系列変化を分析し、その特徴的なフレーミングの変化についてより詳細な言説分析を行う。また、「早期警鐘・コミュニケーション」の観点から、メディアや社会における関心事項の可視化と解釈を行い、リアルタイムテクノロジーアセスメントならびに「責任ある研究・イノベーション」の観点からの理論研究を背景としながら、その実践的な含意を引き出す。 これらの作業を通じて、TAをめぐる実証研究、実践研究、理論研究の要素を包含した新たな研究プロジェクトの提案を目指す。その含意は、科学技術社会論や科学技術政策分野における知見の蓄積は勿論のこと、今後の萌芽的科学技術を巡る社会的議論の在り方の枠組み構築に寄与し、ELSIを視野に入れた適切な科学技術ガバナンスの構築に貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ヒトゲノム研究ならびに再生医療に関するメディア言論動向の分析についての定量テキスト分析のアプローチによるフレーミングの可視化を進めた。とりわけ、「ゲノム」に関する過去約30年間の国内新聞記事における話題の推移を可視化した。その結果、「ゲノム」に関連する記事においては、GM食品やクローン法などを巡る政治・経済的文脈、新型インフルエンザ関連報道、ゲノム科学の活用、遺伝子治療診断/医療応用産業化、アメリカの研究・政策動向などの話題が顕著なテーマとして登場していることが見いだされた。 また、より最近ではiPS細胞研究や再生医療と絡めた形での報道関心が大きいことも示唆された。 加えて、再生医療を巡る社会的関心について、国内共同研究として一般の人々の問題関心と懸念に関する国際的な意識比較調査を実施した。その結果、日本と韓国における類似性、その関心と懸念が先端的な科学技術を巡るガバナンスのあり方にあることを明らかとした。 またリアルタイムテクノロジーアセスメントならびに「責任ある研究・イノベーション」の観点に関する国際的研究ネットワークの拡大を行った。とりわけ、先端生命科学分野における「責任ある研究・イノベーション」研究・実践で世界的評価の高いエジンバラ大学の研究者らとの研究交流ならびに今後の共同研究のためのデータセッションと打合せを行った。またカナダ・アルバータ大学の関連研究者とのネットワーキングも行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度で得た国内外の共同研究ネットワークでの活動をより活性化させ、リアルタイムテクノロジーアセスメントの理論・実証・実践研究を深めていく。 またメディア分析については、マクロな関心のトレンド可視化は進んでいるものの、その背景まで含めた分析を更に進める必要がある。 また、ここまでに獲得したデータを元に、国際学会での発表ならびに論文化を進めるとともに、これまでの成果を書籍としてもまとめ発信を行う。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた海外調査先(カナダ)の研究者へのネットワーキングと議論が、当該研究者が日本に来日することとなったため今年度は国内で行うことができた。その分の繰り越しについては、次年度新たに海外でのヒアリング調査ならびに国際学会発表などで使用する。
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Research Products
(1 results)