2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K12957
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永島 昂 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10733321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 基盤技術 / 素形材 / 鋳物 / 大量生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は日本の素形材産業におけるモノづくりのデジタル化の調査研究を通じて、モノづくり基盤技術の国際競争力の構築過程を明らかにすることであった。 素形材産業のなかで最大規模をほこる鋳物産業のデジタル化は90年代以降に進展するが、本年度はその前提となる高度成長期と低成長期の鋳物産業の需要・供給構造、生産システムと技術についての分析を進めた。 高度成長期に自動車向けの鋳物需要と産業機械向けの鋳物需要が急拡大した。労働生産性の大幅な向上をもたらし、拡大する自動車用鋳物需要に対応した大量生産体制の形成について詳細に検討した。その結果、自動車メーカーが内製部門において大量生産システムを形成し、同時に外注化を進めたこと、大手鋳物メーカーが育成されたこと、自動車用鋳物に関わる下請分業生産が中小企業を含めて広まったことで自動車用鋳物と中小鋳物メーカーとの結びつきが強まり、鋳物産業集積地での自動車用鋳物の生産拡大と企業規模を拡大させる鋳物メーカーの出現に結実したことが明らかになった。他方の産業機械分野では、主として中小鋳物メーカーが多品種少量生産に適した技術導入(炭酸ガス型法)を進められた。 その後、低成長期に入ると、量産型の鋳物メーカーでは自動造型機の高圧化が進み、ニアネットシェイプの鋳物がユーザーに提供されるようになり、非量産型の鋳物メーカーでは有機自硬性プロセスが導入され、多品種少量生産システムが発展した。 本研究では、文献調査やヒアリング調査を行うことでこれらの内容を整理して、適切な論点設定を行うとともに今後の課題を明確にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究実績としては以下の点を挙げることができる。 1.ヒアリング調査に関しては、昨年から有力鋳物メーカーのコンソーシアムTHE LEADING JAPAN FOUNDRIESの総会に参加しており、そのコネクションを通じて、有力鋳物メーカーへのヒアリング調査を進めることができた。また、日本鋳造協会若手経営者委員会の総会に参加するようになり、そのコネクションを通じて、鋳物メーカー、鋳造機械メーカー、鋳造CAEメーカーへのヒアリング調査を進めることができた。 2.近隣分野の専門家が集まる研究会において研究報告を行い、研究内容や進捗についての相談を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究の推進方策は以下のとおりである。 1.高度成長期と低成長期についての研究成果をまとめ、発表する。これに向けて、近隣分野の専門家が集まる研究会において研究報告を行い、研究内容や進捗についての相談を行う。 2.鋳造CAEを開発した企業へのヒアリング調査を進めること、また鋳造CAEと鋳物メーカーの競争力形成との関係についての調査と分析を進めることである。
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Causes of Carryover |
2017年度は校務役職のため、進捗が遅れ、研究期間を1年間延長した(2019年度まで)。2019年度はヒアリング調査の旅費として使用する計画である。
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