2017 Fiscal Year Research-status Report
初期近代における北ヨーロッパの医学の発展に関する研究
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17K12958
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
安西 なつめ 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10768576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医学 / 歴史 / 医学史 / 北欧 / デンマーク / 雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、16-17世紀における北ヨーロッパの医学の特徴及び影響を明らかにするという目的のもと、デンマークのコペンハーゲンを主な対象として、関連資料の調査、研究を進めた。コペンハーゲンは、北ヨーロッパの諸都市の中でも南に位置しており、各地の医学者との交流や著作の普及を通じて、パリやライデンといった、当時最先端の医学に接していた。 初年度にあたる本年度は、『コペンハーゲンの医学・哲学紀要 Acta medica et philosophica Hafniensia』(1673-1680)を取り上げ、基礎データの収集と分析を重点的に進めた。『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』は、1673年から1680にかけて全5巻(全4冊)刊行された。編者はコペンハーゲン大学の解剖学教授であったトマス・バルトリンで、1671年から1679年までの医学を含む自然学全般に関する報告が収録されている。分析にあたっては、各巻ごとに、論考の執筆者、タイトル、概要等をデータベースに整理し、その一部をグラフ化した。論考の執筆者には、トマス・バルトリンのほか、オール・ボルクやエラスムス・バルトリン、ニコラウス・ステノなどがいた。執筆者については、各種データベースや人物事典など、周辺資料を利用し、人物の特定を進めた。また医学のみならず、哲学、植物学、動物学関連の資料なども収集、活用し、紀要に収録されている多様な論考のテーマを把握した。 これらの作業により、おおよそ資料の性質が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる目標は、主要資料のデータベース化および周辺資料の収集であった。 前者については『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』のデータベース化を進めた。作業にあたっては、紀要に収録された論考数の推移、主要な執筆者、論考のテーマなどに着目し、資料全体の傾向が明らかになるよう努めた。現在は、得られたデータに基づいて、次年度の所属学会における発表の準備に着手している。 後者の関連する周辺資料の収集については、北欧の歴史学関連の先行研究、16-18世紀の科学史関連の資料、博物学関連の著作などを中心に広く収集した。 以上の理由から本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度に作成したデータベースに基づいて資料の分析と考察を進め、途中成果を関連学会で発表する予定である。それと並行してデータベースの精度を高め、その上で、収録論考のテーマから、紀要刊行期間内における医学、科学上の関心の推移を明らかにする。さらに、追加の資料として17世紀に相次いで刊行されたフランスの『ジュルナル・デ・サヴァン』や、イギリスの『フィロソフィカル・トランザクション』といった学術雑誌を用い、『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』との比較、調査を予定している。 また、資料の収集や研究の推進をはかるため、デンマークでの現地調査を計画している。
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Causes of Carryover |
理由:予定していた書籍の購入を一時見合わせたため。 使用計画:次年度において、本年度予定していた書籍の購入に使用する。
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