2018 Fiscal Year Research-status Report
初期近代における北ヨーロッパの医学の発展に関する研究
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17K12958
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
安西 なつめ 日本大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10768576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医学 / 歴史 / 医学史 / 北欧 / デンマーク / 雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は16-17世紀のデンマークにおける医学の特徴及び影響を明らかにするため、『コペンハーゲンの医学・哲学紀要 Acta medica et philosophica Hafniensia』(1673-1680)を資料に分析を進めた。分析によって、採録された論考の執筆者、タイトル、概要等をデータベース化し、資料の性質を明らかにした。 これを踏まえ、本年度は当資料の分析をさらに進め、収録論考の内容や傾向を重点的に精査した。当資料には医学および自然学分野の論考が595題収録されている。これら全論考の主題を、医学一般(病気、治療、人の解剖の報告ほか)、奇形の報告、動物の解剖、植物・実験・地学・気象・鉱物などの自然学関連の報告、その他、に区分してデータベース化した。本年度の作業によって、当資料の性質が明らかになっただけでなく、17世紀のヨーロッパで相次いだ科学雑誌の刊行という潮流の中で、当資料が医学的な成果の発表に主眼を置いた特異な資料であることが確認された。これらの成果については研究の途中経過として、所属学会である日本医史学の学術大会で報告した。 また本年度はデンマークの首都コペンハーゲンを訪れ、デンマーク王立図書館にて資料の原書を確認した。そのほか現地では旧王立外科アカデミー(Det Kongelige Kirurgiske Akademi)を活用した医学博物館Medical Museionなど、研究課題に関連する施設を訪れ、資料や情報の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる課題は、『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』について、昨年度作成したデータベースを補完し、さらに、採録された論考のテーマについて、推移と傾向を明らかにすることであった。これらの点についてはおおむね順調に分析が進んだため、成果を学会で報告した。また、次年度にも予定しているフランスの『ジュルナル・デ・サヴァン』やイギリスの『フィロソフィカル・トランザクションズ』との比較に着手し、分析を始めた。加えて本年度は、研究対象としているデンマークを訪れ関連施設をまわったことで、新たな知見が得られた。以上の成果を次年度に反映していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標は、これまでに得られたデータを中心として、本研究の目的である北ヨーロッパの医学の特徴を考察し、発表することである。そのために、これまで取り組んできたデンマークのみならず、同時代の周辺諸国の動向にも留意して研究を進める必要がある。特に、『コペンハーゲンの医学・哲学紀要』に先行して学術雑誌を刊行していたイギリスおよびフランスについては、各国の医学の展開や学術雑誌刊行の背景を焦点に比較し、研究をまとめる予定である。また次年度にも所属学会での発表を予定している。
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