2017 Fiscal Year Research-status Report
日本鶏の品種創生における形質―育種観関係の理論構築
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17K12959
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 光平 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (40790077)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本鶏 / 愛鶏家 / 育種観 / 育種動機 / 形態 / 羽装色 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
[聞き取り調査・調査票調査] 本年度は全国に点在する愛鶏家の中から日本鶏保存団体の会長をされている方を中心に、新潟県、茨城県、千葉県、愛知県、山口県、熊本県、および沖縄県の22名の方と連絡をとり、インタビューおよびアンケート調査を実施するとともに、日本鶏が飼育されている様子の撮影を行うことができた。各調査先でのいもづる式愛鶏家ネットワーク構築により各地の愛鶏家をご紹介していただき、平成30年度以降の調査を順調に展開していく目処が建てられた。特に保存会の刊行する会誌への寄稿等で育種観調査の重要性や形質と育種観の関係性を紹介することができ、愛鶏家との協力体制を順調に展開することができた。各調査を通して聞き取り調査と調査票調査で用いる質問項目の設定も十分に見直すことができた。 [形態学的調査] 形態学的研究パートでは社会学的調査と並行して50個体分以上の画像を収集することができ、各画像から形態学的特徴を抽出した。また、色彩学的検討で用いる標本作りも進んでおり、寄贈していただいた在来鶏品種の死体等から色彩学的特徴の抽出に用いる仮剥製を作成した。東京大学総合研究博物館が所蔵する剥製の撮影から得た色彩学的情報の分析を再度見直すとともに、他研究機関が所有する日本鶏剥製のピックアップと円滑な撮影環境の検討も完了している。 [行動学的調査] 本年度の秋季家禽学会で日本鶏各品種の歩行運動と姿勢について議論し、姿勢や歩行運動の品種間の違いが身体表現論的に解釈できることを議論した。その結果、比較するパラメータの再検討と考証内容の練磨をすることができた。東京農業大学野生動物学研究室にご協力していただき闘鶏品種を用いた3次元画像解析のテストも完了することができ、羽ばたきや跳躍といった歩行以外の行動を定量的に把握し評価することに成功しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由)800文字(1600バイト)、改行は5回まで入力可。 [聞き取り調査・調査票調査] 研究実績の欄にも述べたとおり愛鶏家への社会学的調査によって育種観の実態把握に向けたデータを収集しつつある。未だ十分なデータ量を満たしているとは言えないながらも、品種を評価する上で重要な形態学的特徴や品種ごとへ向けられた理想像について傾向があることを把握し始めている。また、飼育者が品種について語る際に、姿やかたちのみならず、性格について評価していることが観察された。これは飼育者の品種への嗜好性には羽装色や形といった形態学的因子に加え、飼育者がニワトリに感じている性格が育種動機に大きく関与していることを示していると考えられる。他方、品種に備わる諸特性とは別の部分に飼育動機があると思われるケースもあった。つまり、個体数が少ない品種に対して、希少性という点に魅力を感じている人がいることが判明した。 [形態学的調査] 撮影画像から取得した形態学的データについて、予備解析結果では概ね愛鶏家が供述した選抜基準に合致している。しかし、一部の品種では形態への嗜好性について具体的な選抜をしていないものもあった。これは品種を特徴づける形質のなかで形態が重要でない場合もあることを指しているのか、あるいは愛鶏家達が具体的に共有している認識はなくても傾向として一定の形質を選んでしまうことを意味しているのかはまだ判断できない。引き続き形態情報と社会学的調査により得られるデータを蓄積し十分な検討を行えるように尽力する。
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Strategy for Future Research Activity |
[聞き取り調査・調査票調査] 全国の愛鶏家と連絡を取り調査の協力を取り付けることに成功し、今後の調査も順調に継続していく見通しが立っているが、調査過程で多くの愛鶏家から飼育しているニワトリの見栄えが最もよくなる4月、5月を中心に本調査に応じたいという旨ご指摘をいただいた。実際に品評会や展示会が開催される期間も春季に多い。平成30年度の調査においては以上の点を踏まえ、ニワトリ換羽期については個体撮影を控え、愛鶏家への聞き取り、調査票調査に集中する。また、個体の画像撮影については日本鶏の展示会と品評会の際に重点的に行うことにする。現在のところ東北、四国、中部地方での社会学的調査ができていないため、平成30年度では以上の地域を主軸に引き続き調査とデータ収集に取り組む。東北、中部方面についてはすでに現地の愛鶏家と日本鶏保存協会をご紹介していただいている。また、今までに構築された愛鶏家連絡網により各地で開催される品評会等のスケジュールを詳細に収集できるようになった。そのため、平成29年度よりもより効果的に調査が実施できると予想している。 [形態学的調査] 撮影画像サンプルについては以上に述べたとおり春季を中心に品評会や展示会場で撮影を実施する。羽装色については引き続き死体標本の収集と標本化に努めるとともに、選定した剥製標本を収蔵する機関と連絡を取り撮影を行う。平成30年度に開催される家禽学会において「羽装色と色の象徴性」について成果をまとめ発表し議論内容を深める。 [行動学的調査] 歩行と姿勢については平成29年度に学会で発表した内容を深め、平成30年度内に論文投稿する。羽ばたきや跳躍などの行動については計画通り、動画撮影を集積し適宜データ抽出を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初、一年を通して愛鶏家への育種観調査を随時実施する予定であったが、調査を進める内に飼育している日本鶏のもっともコンディションの良い春季に再度調査をしてほしいとの旨ご指摘を受けた。そのため、今年度計画分の社会学的調査を次年度以降の春季に集中する事に方針を変更した。また、愛鶏家の方々の多くは高齢であり、冬季は体調面等で予定通りに調査を実施できないケースもあった。冬期間でのみ得られる飼育の工夫等も把握していきたいが、愛鶏家への負担も考慮し、H30年度は昨年度よりも春季から秋季および展示会・品評会会場での調査を中心に進める。つまり、次年度使用額は昨年度で予定通り実施できなかった調査を実施するための国内旅費として適切に使用される。
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Research Products
(3 results)