2019 Fiscal Year Research-status Report
日本鶏の品種創生における形質―育種観関係の理論構築
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17K12959
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
工藤 光平 東京農業大学, 農学部, 助教 (40790077)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本鶏 / 育種観 / 育種動機 / 羽装色 / 歩行・姿勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は収集されたデータのまとめと解析を進めるとともに、社会学的調査の補完を重点的に行なった。また、適宜研究成果を学術雑誌、国際学会において発表する準備を進めることができた。各研究調査の成果は以下の通りである。
[聞き取り調査・調査票調査] 前年度で構築された愛鶏家ネットワークを用いて、各地で開催される日本鶏品評会でのインタビューおよびアンケート調査を実施し、さらなる調査データ数の蓄積に努めた。また、離島での闘鶏飼育や希少品種を育種する愛鶏家への調査に成功し、本年度は合計31名分の調査データを得ることができた。社会学的調査について、インタビュー調査の結果を中心に論文としてまとめ、2020年11月に発行される学術雑誌"BIOSTORY"に投稿する準備を進めている。また、本社会学的調査による研究成果の一部を2021年8月に開催される国際学会"26th World's Poultry Congress"で発表することが決定した。 [形態学的調査] 本研究により収集された日本鶏画像を用いた羽装色に関する研究成果について、タイで開催された国際学会"The 2nd International Conference on Native Chicken2019"において発表議論した。 [行動学的調査] 三次元動画解析については、データ収集が十分ではないが、限られた品種において解析結果をまとめている。昨年度同様に愛鶏家との友好的な研究協力関係を維持し、行動学的調査で用いる品種をご提供いただいた。また、社会学的調査と並行して行動学的調査に用いる品種を増やすことができた。歩行・姿勢については、保存会の刊行する会誌において研究成果を紹介した。その議論内容をまとめ、前述の学術雑誌"BIOSTORY"に投稿する準備が整いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は研究データを補完しつつ、解析結果をまとめ学会や論文化を進めた。しかし、研究の一部は品種の確保維持が困難であること、コロナウィルスによる影響で愛鶏家へのアクセスが制限されたことにより遅滞しつつある。各調査研究の進捗は以下の通りである。
[聞き取り調査・調査票調査] 本年度末までは比較的順調に調査が進み、データの補完もある定度終えることができた。研究成果もまとまりはじめ、インタビュー調査の一部の成果については、国際学会での発表や論文化の準備も整った。しかし、形質と育種観を理論的に関連づけるには、データ数がまだ足りないと考える。さらなるデータ補完に努めているが、コロナウィルスの影響によって品評会が中止され、高齢の愛鶏家への訪問調査が困難になりつつある。 [形態学的調査] 羽装色についての研究では、国際学会での発表を経て考証内容も深まり、進捗は比較的良好といえる。最終年度内に成果をまとめ論文として発表できる見通しである。 [行動学的調査] 歩行・運動についてデータがまとまり、論文投稿の準備が完了しつつある。他方、3D動画解析については、品種数の確保に努め小型品種を用意することができたが、中型から大型の品種では個体の入手や個体数の維持管理が難しく、十分なデータ数が集められていない。 [統合的分析] 形態データについて、骨格、羽装色のデータは用意できているが、上述したように社会学的調査データの不足と一部の行動学的調査データが収集しきれていない。そのため、最終年度での分析開始は当初の予定よりも遅れる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
不測の事態により当初の計画よりも進行が遅れている研究工程がある。これに対し以下の方策で対応し、研究の遅延を挽回する。
[聞き取り調査・調査票調査] 新型コロナウィルス感染症の感染予防対策を徹底しながら、愛鶏家個人への調査を10月までに完了させる。調査票を用いた調査はWebでの回収方法も取り入れる。すでにインターネット調査に必要なプラットホームと回答フォームの準備が整いつつあり、7月から10月の期間で実施する予定である。11月中にデータをまとめ統合的分析へと移る。 [形態学的調査] 本研究工程の進捗は良好であり、予定通り羽装色について論文をまとめるとともに、統合的分析へ移行していく。 [行動学的調査] 歩行と姿勢は論文化を進めている。3D動画解析については社会学的調査と並行し、愛鶏家が飼育する個体を撮影することでデータ数を補う。この補完については飼育環境の違いが影響しないように、放飼形式での飼育をする愛鶏家に絞り10月までに完了させる。その後データの分析とまとめをしつつ、12月には統合的分析に調査結果を組み込んでいく。 [統合的分析] 前述の通り、データが全て揃うのは10月以降であり、各分析結果をまとめる時間を考えると、統合的分析に本格的に着手できるのは12月頃だと想定される。この遅れを最小限に抑えるべく、今までにまとまっている聞き取り調査、骨格、羽装色、歩行と姿勢の各データを用いて一次統合的分析をはじめ、12月までに統合的分析の一次結果をまとめ考証内容を吟味する。全調査データを用いた分析は2021年2月までに完了させ、年度内での形質ー育種観理論の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により当初予定していた出張調査が中止となったため、旅費で使用予定であった金額を次年度へ繰り越すことになった。調査票の回収に必要な郵送費は本年度前半の調査時に回収できたので計上されていないが、最終年度での回収分については調査票の回収に費用がかかる見込みである。また、不足分のデータを補うために引き続き出張調査を行うため旅費を使用する予定である。調査時に用いる消耗品・機材類は確保されているが、調査データをまとめる段階で必要な情報記憶媒体や管理に用いるケース類が不足しつつある。またデータ入力に必要なキーボード等のPC周辺機器が消耗劣化している。そのため、これらの物品については最終年度の早い段階で購入することを検討している。なお、新型コロナウィルスの影響が続くことで調査が中止されるなど、科研費に残額が生じた場合は返還手続きを行う。
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Research Products
(3 results)