2021 Fiscal Year Research-status Report
遺跡出土貝類遺体の安定同位体比による水域環境の復原と海況変遷
Project/Area Number |
17K12961
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
一木 絵理 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (60633930)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | オールコアボーリング / 桜川低地 / 放射性炭素年代測定 / 珪藻分析 / 炭素・窒素同位体比 / 貝塚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、遺跡出土ヤマトシジミなどの貝殻の安定同位体比(炭酸塩のδ13C及びδ18O)および完新世堆積物の珪藻分析から、遺跡周辺の水域環境を時空間的に復原することである。 これまで、現生貝類や遺跡出土貝類の安定同位体比分析や放射性炭素年代測定を行ってきたが、今年度は遺跡周辺の低地部においてボーリングコアを採取し、水域環境の変遷を検討した。候補地の検討、交渉が順調に進み、2地点においてボーリングコアを採取することができた。 ボーリングコアは、土浦市における桜川低地の2地点において行った。1つは、虫掛中央公園における長さ12mのオールコアであり、コア掘削後には地下水観測・教育のため、井戸管を設置した。コア堆積物の半裁、記載、写真撮影を行った。採取深度-5.5~6mに砂礫層が認められ、これより上位が完新世の堆積物と考えられる。はっきりとした海成層は確認されなかったものの、干潟環境と思われる砂質シルトが確認でき、縄文時代の海域は現在の桜川低地全面までは広がっていなかった可能性が考えられた。 2つ目は、土浦市市民運動広場における長さ30mのオールコアである。1つ目と同様に採取深度6m以下に砂礫層が確認され、それより上位は砂混じりシルトが堆積していた。そのほか、深度約23m、約26.5mにも砂礫層が確認された。2つ目のコアは完新世だけでなく、更新世の堆積物についても検討することができる良好な試料が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題において、遺跡出土貝類の安定同位体比から得られる水域環境と、低地で採取したボーリングコアから読み取る水域環境の変遷について、相互の比較検討が必要であるが、後者については今年度良好な試料が得られ、今後の分析で大きな成果が上げられると考えられるが、前者については、試料の分析数が少なく、水域環境の復原についての議論が難しい状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたボーリングコア試料について、放射性炭素年代測定および珪藻分析を実施し、水域環境の変遷を明らかにする。また、遺跡出土の貝類の安定同位体比について、貝殻の成長縞を用いた解析を進め、ボーリングコア試料の成果と比較検討を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度採取したボーリングコア試料について、年度内に放射性炭素年代測定や珪藻分析などの自然科学分析まではできなかったため、次年度業務委託する予定である。
|