2017 Fiscal Year Research-status Report
Application of Terahertz wave imaging technique and micro-focus X-ray CT for surveying of surface layer structure of the painting cultural properties
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17K12964
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
金 旻貞 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, アソシエイトフェロー (60755784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ波分光イメージング / 0.2~1.5 THz周波数帯 / 彩色文化財の非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度研究成果は、まず東洋彩色文化財の材料について実際にテラヘルツ波イメージング技術で用いられる装置の0.2~1.4THzの周波数帯におけるテラヘルツ波の反射・透過特性を検討した。 計測したデータを検証した結果、最適な分光スペクトルを与える周波数範囲がテラヘルツ波分光システムに依存していることが明らかとなった。基底材についてはテラヘルツ波の低周波帯を用いることで有効性が高いこと、次に彩色層の色料については高周波帯での検討をすることで違いを区別できることが明らかになった。このことから、0.2~1.5 THz周波数第における汎用データベースの構築を行った。そこでデータベースの蓄積にあたっては、各材料のテラヘルツ波スペクトルにおいてどの周波数に吸収があるかを確認することに重点を置き、その結果として分光分析が可能な材料であるかを示すことにした。 また、実際に彩色文化財に対して種々の電磁波を用いた非破壊調査をおこない、彩色文化財における情報源をより広い範囲で求めることができた。特に、修理前の調査技術としてだけではなく、修理後の評価手法としてもテラヘルツ波イメージングを応用できることが明らかとなった。テラヘルツ波イメージングの全画像および断面画像から得られる情報とともに、周波数信号(time domain spectrum)のパルス信号のピーク数の変化から彩色文化財の欠損部の補填などの修複の痕跡を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
彩色文化財の重層構造は材料と塗装技法によって様々であり、非破壊でそれらを明らかにすることはきわめて難しい。そこで材料や層構造が既知の標準試料を調製し、得られた内部構造の標準データと彩色文化財の彩色劣化の種々の現象を比較することにより、彩色文化財の内部構造調査に適した0.2~1.5 THz周波数帯における分光データベースを充実させていくこととした。テラヘルツ波イメージング技術は決して完成した技術ではないため、これからも研究と工夫、改善を重ねていかなければならない技術であるが、彩色文化財の調査について極めて高い応用性があることが明らかとなったことは、大きな成果といえる。 なお、本研究の結果については国際及び、国内学会で発表を行っており、「第34回日本文化財科学会」ではポスター賞を得るなどの成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
未知の物質を同定するためのスペクトルデータベースは必要不可欠である。テラヘルツ波の文化財調査への応用はまだ始まったばかりではあるが、その中でも彩色文化財への応用性は最も期待できる。しかし、テラヘルツ波は、材料によってその侵入深さや分解能が異なる。現時点で構築されているテラヘルツ波分光スペクトルのデータベースは多様な彩色文化財を対象にした場合は、不十分であると言える。従って、汎用の非破壊診断技術として応用を進めていく上では、材料や層構造が既知の標準試料を調製し、得られた内部構造の標準データと彩色文化財の彩色劣化の種々の現象を比較した0.2-1.5THz周波数帯における分光データベースの充実が必要である。 一方、テラヘルツ波イメージングのデータの場合は、2次元、3次元の画像も得られるため処理する情報量が膨大であり、解釈を行うことは難しい。さらに実際の文化財資料の多くは、その表面状態の凹凸が大きいため、反射信号が弱くなるだけではなく、補正ができないほどずれてしまい、データ解析に誤差が生じる可能性もある。 従って次年度以降はデータベースの充実とデータ解析を正確に行うための補正をかけるなど技術面の研究と工夫、改善を重ねていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は予定通りに予算消化したが、旅費について当初よりも安価に済ませることができたため、余剰金が発生した。 余剰分は次年度の物品費や旅費などに適切に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)