2018 Fiscal Year Research-status Report
Application of Terahertz wave imaging technique and micro-focus X-ray CT for surveying of surface layer structure of the painting cultural properties
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17K12964
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
金 旻貞 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, アソシエイトフェロー (60755784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ波分光イメージン / 0.2~1.5 THz周波数帯 / 定量的なイメージ分析 / 彩色文化財の非破壊検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究成果は、大きく2つを挙げられる。一つは、THz周波数帯における研究例を増やし汎用データベース構築に役立てたことである。特に10-11世紀ものと考えられる壁画の調査を行った。本資料は、992年に発掘され、2006年の臨時処置が初めての修理記録として残されている。長期間保管されてきた資料を用いて測定を行った結果、目視で判断できる亀裂の他にも、数多くの損傷が確認でき、その大きさ、深さは多岐にわたることがわかった。さらに、この損傷具合は点から線へ、線から面的な破壊を及ぼすことが考えられ、今後の保存環境を考える際の参考資料として有効性が高いことが明らかになった。 もう一つの成果としては、テラヘルツ波イメージング画像処理についてイメージプロセシングソフトウェア(PicMan,WaferMasters,Ind.以下、イメージ分析)を用いてテラヘルツ波イメージング画像処理を試みた。これまでに、テラヘルツ波イメージングの大量な情報処理が困難であった。テラヘルツ波イメージング画像の得られる信号は0(黒画像)と(白画像)のみの画素値ではなく、その中間(灰色画像)の値も含んだ0から255までの整数値をとっている。すなわち、ディスプレイは画像を多数の輝点で表示するが、目視ではその白と黒、灰色の明るさに対して厳密な区分が難しいからである。そこで、機器付属の専用のソフトウェアとともに、イメージプロセシングソフトウェアを併用しデータ処理を行った結果、モノクロ画像に対して誰もがわかるような損傷状況が分かる画像を提示することができるようになった。このように、大容量の生データの中から、状態確認から更なる修理方針策定に至るまで目的に応じた実効性が高いデータを抽出できるようになったことは大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
彩色文化財の重層構造は材料と塗装技法によって様々であり、非破壊でそれらを明らかにすることはきわめて難しい。従って前年度に引き続き、標準試料の計測とともに、彩色文化財資料測定も継続し、0.2~1.5 THz周波数帯におけるデータベースを充実させていくところである。 また、テラヘルツ波イメージング技術は決して完成した技術ではないため、研究と工夫、改善を重ねていかなければならない技術である。そのために、本年度は画像処理について新たな手法を併用することを試みた。その結果、画像を構成する領域を選択し取り出しが可能な領域分割処理を行うことができた。また、2次元画像平面上での3次元情報の関係をこれまで以上に容易に可視化することができたのは、大きな成果かといえる。 なお、本研究の結果については国際及び、国内学会で発表登録している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、多様な彩色材料に対する0.2~1.5 THz周波数帯における分光データベースを充実させていくところである。次に実際の文化財資料の多くは、その表面状態の凹凸が大きいため、反射信号が弱くなるだけではなく、補正ができないほどずれてしまい、データ解析に誤差が生じる可能性もある。したがってデータ解析を正確に行うための補正をかけるなど技術的な面での工夫が必要である。次年度以降はこの部分について改善をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
計画していた国際学会誌に登載が実現できず、余剰金が発生した。その他には予定通りに予算消化した。 余剰分は次年度の学会発信および旅費や物品費などに適切に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)