2020 Fiscal Year Research-status Report
足跡化石コレクションの構築と児童生徒が創造的,探究的に学習できる展示の開発
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17K12968
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
柴田 健一郎 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 学芸員 (20443327)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 足跡化石 / 博物館 / 展示 / フォトグラメトリー / 恐竜 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年と2019年に米国ユタ州で実施した前期ジュラ紀の足跡化石産地の調査結果が,New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin 82号に掲載された。この足跡産地では少なくとも100個の肉食恐竜の足跡化石ユーブロンテスと,それらからなる24組の歩行跡が見いだされた。そのうち4組の歩行跡は,走った肉食恐竜が残したと考えられ,最大で49 km/h のスピードが見積もられた。 複数視点から撮影された写真を基に撮影物の三次元的な形状を復元する手法,フォトグラメトリーによって,足跡化石の形状を三次元的に復元した。この手法は足跡化石の形状を客観的に記録するために有効である。また,この手法は植物食恐竜である鳥脚類の足跡化石に残された皮膚の跡を復元するのに十分な解像度を有することが明らかとなった。さらに,復元した三次元画像上で,足跡化石の長さや幅,歩行跡のステップやストライドが1 cm 未満の精度で計測された。この成果は横須賀市博物館研究報告(自然科学)68号に掲載された。 横須賀市博に収蔵された足跡化石資料106点のカタログを執筆し,横須賀市博物館資料集45号に掲載された。収集された資料は,おもに日本国内から産出した新生代の哺乳類足跡化石,中生代の恐竜足跡化石と,米国コロラド高原地域産の中生代の恐竜足跡化石のレプリカである。10点の足跡資料についてはフォトグラメトリーによる深度マップを掲載した。 これらの基礎研究の成果と資料カタログに基づき,足跡化石をテーマとした展示会を企画し,展示物を検討した。また,展示解説書の執筆と編集を完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に開催予定であった展示会が感染症拡大の影響で開催できず,展示物の評価もできなかったため,「遅れている」と判断した。そのため補助事業期間延長を申請した。足跡化石資料の収集は2019年度で完了している。延期された2021年の展示会に向けて,足跡化石の発掘体験型展示,床面を利用した足跡化石産地の再現展示,フォトグラメトリーを用いた足跡化石三次元モデルのタブレット端末展示,足跡化石産地の360度画像のタブレット端末展示,足跡を残した動物の歩行速度に関する展示,足跡化石と足跡化石産地のジグソーパズル展示等の開発がほぼ完了している。また,2020年度は足跡化石の基礎研究についての論文2件と,足跡化石資料のカタログ1件が出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
横須賀市博で足跡化石をテーマにした特別展示「足跡から探る太古の世界―恐竜からナウマンゾウまで―」(2021年7月24日~12月6日)を開催する。来場者に対するアンケート調査,ならびに観覧行動調査を行い,児童生徒が探究的に学習できたかを評価する。閲覧行動調査は,アイトラッキング技術の活用を試みる。開発した展示物とその評価,ならびに米国ユタ州の足跡化石産地や周辺の地質の調査結果について,原稿を執筆する。足跡化石資料のデータベースを,横須賀市博ホームページで公開する。
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Causes of Carryover |
予定していた展示会が感染症拡大の影響で開催できず,展示物評価のための消耗品の購入や,アイトラッキング機器や解析ソフトウェアのレンタル等ができなかったため,次年度使用額が生じた。2021年度に特別展示を開催し,上記の展示物評価のために助成金を使用する。
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