2017 Fiscal Year Research-status Report
有機金属錯体を有効成分としたリンフリーの次世代高性能消火剤の創製
Project/Area Number |
17K12987
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小柴 佑介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 技術専門職員 (60419273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フェロセン / 消火剤 / マイクロエマルション / リンフリー / 火災 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における火災による死傷者数は年間約1万人で推移し,大地震時には大火災の発生が危惧されている.従って,消火器による初期消火が重要視されており,消火剤の更なる高性能化が必要である.現在リン酸塩(ADP)を有効成分とする粉末消火剤が広く利用されているが,リン鉱石の枯渇リスクがあるため,リンフリーの次世代消火剤が希求されている.そこで,リン資源の保護かつ高性能化を目指して,主として有機鉄化合物を有効成分とする次世代消火剤を創出することを目的とした. 当初計画に従って,本年度は(1)分散性を改善して消火性能を向上させるフェロセンを含有した新規マイクロエマルション(ME)消火剤の調製法の確立,および (2)acac 金属錯体の燃焼抑制効果の評価を行った.得られた主な結果は次の通りである. (1)界面活性剤として Noigen TDS および Triton X-100を用いた場合,熱力学的に安定なフェロセン含有(0-1000 ppm)O/W MEの調製に成功した.相分離の有無は静置法により評価し,少なくとも 9 ヶ月間相分離が起こらないことを確認した.DLS により,本研究のフェロセン濃度においては,フェロセン濃度を変えても油滴径は一定であり,消火性能の評価において影響を与えうる油滴径の影響は無視できることを確認した.タグ密閉式引火点試験器により,フェロセン含有MEは 93 ℃以下の引火点を示さないことを確認した.なお,次年度の計画であったMEのプール火災に対する消火性能の評価も一部先行して実施し,既存の液系消火剤(強化液)よりも高い消火性能が示すことを見出した. (2) 鉄の acac 錯体の合成に成功するとともに,燃焼抑制効果の評価を行った.結果的には,鉄の acac 錯体の不安定性に起因して,ADP よりも高い燃焼抑制効果を発現することを認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,上述したような有用な知見を得ることができた.また,当初計画では次年度実施予定であったフェロセン含有マイクロエマルションの消火性能の評価も一部先行して行い,得られた知見を論文にまとめ,投稿した.以上のことから,概ね当初計画通りに研究を遂行しているものと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,鉄の acac 錯体に関しては予想よりも低い燃焼抑制効果を発現するのに留まった.その一方で,他の金属の acac 錯体に関しては ADP よりも高い燃焼抑制効果があることを確認しつつあるため,これらの燃焼抑制効果を評価するとともに速度論解析を行い,消火機構の解明を行う予定である.マイクロエマルションの研究に関しては,当初計画に従って消火実験を引き続き実施する予定である.
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Causes of Carryover |
若干の繰越金 (10 万円) が生じた理由は,参加を予定していた国際会議が国内で開催されたため,旅費が予定よりも低額で済んだことに起因する.次年度交付額と合わせて,研究の遂行に必要な物品費などにする予定である.
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