2017 Fiscal Year Research-status Report
医療機器の不具合の特定を支援するインターフェース設計:認知行動モデルに基づく検討
Project/Area Number |
17K12990
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
前田 佳孝 自治医科大学, 医学部, 助教 (40754776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒューマンマシンインターフェース / アラーム設計 / 医療機器 / 医療安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、血液透析の現場で用いられる生命維持管理装置に不具合(警報)が生じた場合に、臨床工学技士が現場で迅速かつ適切にその原因を特定し、復旧させることができるよう、原因特定を支援するインターフェース設計の要件を明らかにすることを目的とした。本年度は下記の内容を実施した。 (1) 日常で遭遇しうる不具合を模擬的に生じさせる仕掛けを透析装置に5つ施し、その原因特定を技士7名(経験年数4~25年目)に行ってもらった。 (2) 現状の装置の警報発生メカニズム(メーカが想定する警報とその発生原因の連関図)と、(1)での技士の原因特定行動の詳細(参照した情報や行った操作等)をそれぞれ明確化した。 (3) (2)を基に、装置モニタのインターフェース設計の問題点を明確にした。特に、①警報名、②データや配管図(装置内部の簡略図)の表現方法に問題が見られた。 (4) (3)の問題点のうち、本年度は①警報名に着目し、メーカ2社の装置各1台について計247の警報名を分析した。結果、1) 不具合パーツやその状況に関する記載が不明確であること、2) 1つの不具合原因・パーツに集約されすぎた過度に具体的な記載であること、3) 記載された不具合が広範囲にわたっていること、4) 技士の故障修理には不要な情報を過度に記載していること、5) 真の不具合とは関係のない不具合を連想させる記載であること、6) 不具合検出の根拠の記載が不明確であること、7) 2つ以上の意味に解釈できてしまう日本語表現であること、8) 日本語の意味がそのものが理解しづらいこと、9) 専門用語が分かりにくいこと、10)表現方法に統一性がないことといった問題点が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実験・調査では、当初、透析装置を1種類に限定して行う計画であったが、他社製品との比較検討を加えることで、次年度のインターフェース設計案作成にあたっての要求事項や、検討すべき事項がより広範に明確化できた。これを基に、次年度の設計工程や実証実験が可能な状態である。 ただし、本年度より、透析関連学会等のワーキンググループにより、装置メーカ間での警報名等の用語の統一が図られており、今後、現行の警報名が変更になる可能性が高いことから、「研究実績の概要」の(4)で示した問題点を「警報名設計における留意事項」として関連学会に報告した上で、次年度は「どのような警報名が最適か」といった検討は行わないこととする。すなわち、もう一点のインターフェース上の課題であるデータや配管図(装置内部の簡略図)の表現方法に焦点を絞って、インターフェース設計案の作成、実証実験を行っていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後における研究の進め方としては、下記の3点を実施する。 (1) データや配管図の表現方法における問題点の洗い出しを行う。具体的には、メーカ間における表現方法の差異を分析し、技士の原因特定失敗との関係性について明らかにする。 (2) 前述の理由より、特に検討が求められる配管図やそのデータの表現方法について焦点を絞り、(1)の問題点を解決するための複数パターンのプロトタイプを作成する。 (3)(2)で作成したプロトタイプと現行のインターフェースをそれぞれ用いて、不具合の原因特定を技士に行ってもらう。そして、原因特定の成否率や、特定に要する所用時間等について比較し、時間短縮効果や原因特定成功率向上、満足度などについて検証する。
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Causes of Carryover |
H29年度の研究範囲である技士の認知的タスク分析を行うに当たっては,対象者の注視点を記録することが可能なアイマークレコーダ本体を購入し,それを実施した.H30年度は,その分析をより発展させ,注視時間の正確な計測や注視範囲の見える化等を行い,それを透析装置インタフェースの設計に反映させる予定であるため,それら詳細な分析を専門に行うことが可能な分析用ソフトウェアを,29年度余剰金と30年度助成金を合算することで購入する予定である。
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