2023 Fiscal Year Research-status Report
記憶錯誤に起因する不安全行動とその抑制に向けた安全対策の探究
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17K12992
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
安達 悠子 愛知大学, 文学部, 准教授 (40629945)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不安全行動 / 医療 / 中断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,作業を再開する際に,ある作業をしたと思ったり,まだしていないと思ったりという記憶錯誤から起こる不安全行動がどのような環境で生起しやすいかを明らかにすることが目的であった。そのため,主課題の途中に種類の異なる挿入課題を入れて中断を生起させ,挿入課題が主課題へ及ぼす影響を検討した。主課題は薬剤の確認,挿入課題は認知的な処理の程度が異なる2種類で,認知的な処理が高い挿入課題はアナグラム(文字を組み替えて単語を作る)と認知的な処理が低い挿入課題はリーチング(手を伸ばして刺激に触れる)であった。参加者は病院実習を終えた看護学生40名で,アナグラム群,リーチング群,挿入課題がなく主課題のみを行う統制群のいずれか一つにランダムに割り当てられた。アナグラム群18名,リーチング群16名,統制群6名であった。 主課題再開の易度と確信度,参加者の記憶方略,日常生活における失敗との関連の観点から追加の分析を行った。主課題再開の平均易度・主課題再開の平均確信度ともに,アナグラム群はリーチング群に比べて有意に低かった。主課題の易度は2群に差が見られないのに対し,主課題再開の易度と確信度は,認知的負荷の高いアナグラム群で低いことが示された。記憶方略は,実験終了時に主課題を離れる際にどこまでやったかを覚えておこうとしたかを参加者に尋ね,した場合はどのように工夫をしたかを自由に語ってもらった。その結果,34名全員が主課題を離れる際にどこまでやったかを覚えておこうとしたと回答した。工夫(記憶方略)に関しては,覚えようとした単語の位置に言及した参加者が32名(最後チェック語7名,再開チェック語18名,両方7名),単語の注目箇所に言及した参加者が21名(冒頭1-3字15名,全体4名,その他2名)であった。日常生活における失敗傾向質問紙(山田,1999)と再開エラー数との間に有意な相関は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究に予定した値のエフォートをあてることができず,現在までの達成度はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は追加の分析を進め,主課題の易度と主課題再開の易度や確信度実験課題の相違,記憶方略の概観が明らかになった。今後は,中断が入るタイミング(主課題の連続試行数などの中断が入るタイミング,単語の既知度や類似度などを検討したい。
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Causes of Carryover |
分析は手持ちツールで行い,文献入手等には所属機関のサービスの利用等で安価に行うことができたことから,全体の支出は少なかった。今後は,データセットの追加整理や実験に用いた刺激への判定に人件費,研究成成果発表費用への使用を計画している。
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