2018 Fiscal Year Research-status Report
津波流動・がれき挙動双方向結合モデルと火災モデル開発による津波火災モデルの高度化
Project/Area Number |
17K13002
|
Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
千田 優 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (70774214)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 津波 / 津波火災 / がれき / シミュレーション / 津波火災リスク評価 / がれき化 / 断片化 / 建物がれき |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年東北地方太平洋沖地震津波では、数多くの津波に起因する火災(以下、津波火災と記す)が発生した。岩手県山田町等で発生した津波火災は、高密度に集積したがれきが延焼拡大の要因となったと考えられている。今後発生が懸念されている巨大津波でも津波火災が発生する可能性はあり、そのリスクを評価するためにがれきの発生・漂流・漂着の推定精度を向上させる必要がある。 近年では、計算手法の高度化に伴い、建物の破壊過程を考慮した浸水計算や破壊された建物から生じるがれきを対象にした漂流物計算が実施されるようになってきたが、計算結果を定量的に評価した研究例はない。また、建物がれきが流体場に及ぼす影響を考慮した数値モデルは多くなく、その効果について現地地形を用いて検証した研究例はない。そのため、建物がれきを対象にした漂流物計算の条件や結果の妥当性は十分議論されているとは言えない。
平成30年度は、2011年東北津波時の岩手県山田町を対象に、二種類の仮定(1.建物が形状を保持したまま漂流する場合、2.移動開始と同時に建物が断片化して漂流する場合)のもと漂流物計算を行った。それらの結果から漂流・漂着特性を明らかにし、航空写真から推定したがれきの平面分布や海上流出率を計算結果と比較することで、漂流物の計算条件や計算結果の妥当性を検証した。これにより、建物がれきを対象とした漂流物の漂着位置の分布を推定するためには、がれきの断片化を適切に考慮することが重要であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の項目に示す研究計画の変更はあったものの、2011年東北津波時の岩手県山田町を対象にした数値実験を実施し、これまで明らかにされていなかった建物がれきの漂流や漂着の特性を調査した。また、数値計算の結果を画像解析の結果や海上流出率に関する統計データと比較することで、建物がれきを対象とした漂流物予測に関する技術向上要件を整理した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は、以下の内容を実施する。まず、建物の破壊条件について、平成29年度に検討した建物の破壊判定手法を現地に適用し、2011年東北津波時の建物の被害実績が再現できるか検討する。次に、平成30年度の研究で明らかになった建物がれきの断片化の過程の重要性について、がれき漂流モデルを改良することにより検討を実施する。最後に、平成29年度に開発した津波流動・がれき挙動双方向結合モデルを用いて、岩手県山田町を対象に現地適用計算を実施し、双方向結合モデルの効果を評価する。三年間の研究成果として、建物がれきの漂流・漂着を適切に予測するモデルの技術的要件をまとめる。 研究計画の変更点を記す。当初本研究課題は火災モデルの開発や改良を含めていたが、研究を進めていく上で、市街地の火災を予測するには何よりも建物がれきの挙動を適切に予測するモデルが必要であることがわかってきた。そのため、本研究課題では建物がれきの挙動を予測するモデルの精度向上に注力するため、研究計画を一部変更した。
|
Causes of Carryover |
研究計画見直しにより計算サーバと周辺機器の購入に至らなかった。 今年度は成果発表のための費用に充てる予定である。
|