2017 Fiscal Year Research-status Report
都市の将来変化を加味した地震・津波の複合による人的被害評価手法と減災手法の開発
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17K13003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中嶋 唯貴 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60557841)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人的被害 / 室内被害予測 / 建物被害予測 / 閉じ込め / 津波避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、地震動による人的被害予測式の高度化と地震動による住居・室内被害を考慮した津波による人的被害予測手法の構築したのち、長期的なリスク評価を可能とする手法を構築する。 具体的には、人的被害予測の高度化に関しては、これまで建物被害のみから推定されていた人的被害推定において、建物倒壊に起因する人的被害と室内被害に起因する人的被害を区別し、建物の空間損失率を示すW値を導入することで原因別に推定可能な手法の構築を行った。また、建物被害推定については、データの収集が難しい1970年以前の建物の耐震性能を収集すべく過去の集落調査などのデータを用いて耐力分布を作成する方法を考案した。室内の被害に関しては、地域の世帯人数別家具保有数、床面積、家具種別等をリスク評価に用いることで室内リスクの地域性が考慮可能となった。構築した人的被害推定手法を新潟県中越地震・熊本地震の被害と比較しこれまでの既往式に比べ精度が高いことを確認した。構築した手法を札幌市月寒断層における被害推定に用いることですることで建物被害と室内被害の空間分布がが異なることを明らかにした。この結果は、これまでの建物被害分布のみによる人的被害予測を用いた減災戦略ではない新たな戦略の必要性を示している。 次に、地震動による被害が津波被害に与える影響を検討すべく兵庫県南部地震における建物損傷度ごとの閉じ込め率を利用し、地震後の建物内閉じ込め関数を構築することで津波到来時に都市こめられる人々の推定を可能とした。 最後に、人口、建て替えに伴う耐力分布の変化、老朽化、室内面積、家具量などを将来予測し構築した人的被害・閉じ込め予測式に代入することで、これまで推定されてこなかった地震動に伴う建物室内被害が津波到来時の人的被害発生に与える影響の将来変化推定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画に則り、地震動による建物被害と室内被害ごとの人的被害と閉じ込め率の推定式を構築したことにより、津波被害へこれらが与える影響を評価可能となった。このことより、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、構築した関数群や都市マスタープランなどの関連資料を用いをもちい、北海道の主要都市において将来変化を用いた人的被害評価を実施し、各都市の地震・津波に伴う人的被害発生リスクが地域ごとにどのように変化していくのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
予定していた北海道南西沖地震被災自治体における資料収集であるが、本年度構築した手法を用い被害の変遷を推定した後に実施するほうが、自治体担当者に資料の必要性や利用法を伝えるのに効果的であると判断したため推定結果が出た後の次年度に実施することとした。そのため、今年度の旅費12万円を次年度に使用することとした。
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