2019 Fiscal Year Research-status Report
フェーズドアレイレーダーを用いた台風環境下における竜巻発生メカニズムの解明
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17K13007
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
足立 透 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 主任研究官 (10632391)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 台風 / 竜巻 / フェーズドアレイレーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は台風環境下の竜巻発生メカニズムの解明に向け、3次元渦探知技術の開発に取り組み、メソスケールの渦の網羅的な検出を行った。その結果、台風の南東象限において、鉛直に発達した3次元的な渦が数多く捉えられ、竜巻発生の指標として有効利用可能であることが示唆された。 また令和元年10月12日には、台風19号の接近に伴い、千葉県市原市にて竜巻と推定される突風被害が発生した。そこで、この台風環境下における竜巻について、被害域からわずか5km圏内に位置したフェーズドアレイレーダーによる観測データを詳細に解析し、竜巻発生に関わる物理メカニズムについて考察した。突風被害が発生する約8分前から、メソサイクロンの後面で降水コアの落下が生じ、地面付近ではガストフロントが形成された。さらに被害発生の約5分前から、ガストフロント東側の低層域において反時計回りおよび時計回りの回転を有する渦のペアが生じ、次第に上方へと進展していき、上方が北西側にやや傾いたアーチ状の立体構造を有する様子が捉えられた。また、この渦ペアのうち北側の反時計回りの渦成分は、当初上空のメソサイクロンのやや東側に位置していたが、その後に徐々に接近しながらメソサイクロンの下部に位置した。この接近に伴って当該渦成分は、高度1km付近の上端部分から回転速度の強まりを示したのちに、低高度へと下方伝搬し、被害域を通過する様子が明らかになった。これらの結果から、本事例における突風被害の発生には、降水コアの落下に伴う下降流とその周辺における水平渦リングの形成、ガストフロント上の立ち上げ効果によるアーチ状渦の形成、またメソサイクロンとの上下結合による反時計回りの渦の強化が寄与したものと考察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度には、年度当初の実施計画にある3次元渦探知技術による渦の総括的な解析に加えて、同年台風19号に伴って10月12日に千葉県市川市で発生した、竜巻と推定される突風被害について、詳細な解析を実施した。この結果、台風環境下におけるメソスケールの渦の発生のみならず、それに伴う竜巻の発生メカニズムについても理解が大きく進展した。 これらにより、研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、令和元年台風19号に伴う千葉県市原市における事例および平成29年台風第3号に伴う埼玉県草加市における事例を中心に、台風環境下の竜巻発生メカニズムについて得られた結果を取りまとめ、将来の防災気象情報の高度化に向けた総括を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画の物品等について合理的な調達が可能となったため、次年度使用額が生じた。この経費は、主に次年度の研究成果発表に充てる。
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Research Products
(9 results)