2020 Fiscal Year Annual Research Report
Prediction for the heavy precipitation associated with the Baiu front over Kyushu
Project/Area Number |
17K13009
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
杉本 志織 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 研究員 (90632076)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 豪雨 / 広域水蒸気輸送 / 力学ダウンスケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度7月初旬のAOGS annual meetingにて本課題に関わる成果を口頭発表するため補助事業期間延長申請を行ったが、新型コロナウィルスの蔓延により開催が中止された。代わりに、日本地球惑星科学連合大会にオンライン参加し成果発表を行った。 研究期間全体を通じて、明らかになったことは以下の通りである。 1980-2007年の梅雨期を対象として九州地方における大雨事例を抽出した。大雨発生日には、西日本上空で低気圧性循環が強化され、梅雨前線への水蒸気供給が活発となった。この低気圧性循環の強化に対して、チベット高原上で発生し対流圏中層を東方移流する高渦位域の重要性を指摘した。成果はSugimoto (2020)として学術誌SOLAに掲載された。 豪雨の局地的な発生地域・時刻の予測可能性を評価するため、2017年7月5-6日に発生した「平成29年7月九州北部豪雨」を対象とし、水平解像度2㎞のアンサンブル力学ダウンスケーリング実験(540ケース)を実施した。残念ながら、豪雨の再現精度は全体的に高くなく、再現された降水量は観測値と比べてかなり小さな値となった。また、入力値である広域大気場と降水再現性との間に系統的な関係性は見いだせなかった。少なくとも本対象事例の豪雨再現については、より空間解像度の高い数値実験による超局所的気象場の再現が要求されると結論付けた。 当初の計画にはなかったが、中国の稲作灌漑が梅雨期の九州地方周辺における平均的な水蒸気輸送に対し遠隔的に影響することが示唆された(Sugimoto et al. 2019, JGR)。また、本研究で用いたアンサンブル力学ダウンスケーリング手法を他地域にも適用可能かどうかを調査すべく、世界屈指の複雑地形を有するヒマラヤ周辺を対象として試験的実験を実施した。これらに関わる研究成果ついても本課題の成果としたい。
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