2017 Fiscal Year Research-status Report
ニューロンの協調的な運動が創発する脳形成のダイナミクスの解明
Project/Area Number |
17K13015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武石 直樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30787669)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ニューロン / 脳発生 / 大脳新皮質 / 細胞バイオメカニクス / 計算バイオメカニクス / 医工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,脳発生の段階で見られるニューロンの協調的な移動を成立させる力学的条件と脳形成のダイナミクスの関係を解明し,細胞と組織間の階層を繋ぐ力学的概念を構築する.この目的に向け,実験データに基づいた計算力学モデルを構築し,数値シミュレーションからニューロンの移動に起因した脳の成長に関わる組織スケールの力学因子を抽出する.そこで,外部の力場と細胞内生化学反応に着目して細胞移動を数理モデル化し,最終的に細胞膜の力学と生化学反応を連成した大規模な力学解析を行う.本年度は,実験力学に基づき,細胞内タンパク質であるアクチンの重合と膜の伸展を数理モデル化し,細胞膜と基質間の相互作用によって細胞膜が伸展する様子をシミュレーションすることに成功した.構築したモデルは,ナノスケールのアクチン重合反応をボトムアップ的に膜の伸展力として組み込んだ新たな細胞モデルと言え,これにより,生化学反応としてのアクチン重合と細胞膜の変形を連成した数値シミュレーションが可能になった.構築したモデルによって,膜の非圧縮性の低下により,膜の伸展性と配向性が増加することを明らかにした. これは,実験結果と定性的に一致しており,今後より詳細な解析をすすめることで,構築したモデルの検証を行っていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,数理モデル化に必要なニューロンの移動に関する実験結果については,京都大学の見学見根子教授のグループとの打ち合わせで共有してきた.さらに,学術報告会の場で,慶応大学の中嶋一範教授からニューロン移動に伴う接着タンパク質のダイナミクスに関する知見を共有することができた.構築したニューロンの数理モデルは,これらの実験結果を反映させており,これを用いたシミュレーションによって細胞膜の伸展を再現することに成功している.研究開始初年度において,本研究の基礎となる生化学反応としての接着タンパクのダイナミクスと細胞膜の変形を連成したモデル構築を達成できたことは大きな成果であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
構築したモデルを用いたシミュレーション結果から,膜の非圧縮性の低下が膜の伸展性と配向性が増加することが分かった.今後,これらの結果と実験結果との定量的な比較を行っていく.基質上のニューロンの挙動に関する実験結果は,Korea Brain Research Instituteの小曽戸陽一教授との打ち合わせにより共有する.データの不足がある場合は申請者自らが実験を行うことも予定している.単一細胞レベルで実験結果とシミュレーション結果の整合性が得られた後,ニューロンの集団としての移動を解析していく.この結果から,組織としての成長に関わるパラメータ(例えば,塑性変形の時間スケールを表す係数)の抽出を試みる.
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