2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Earphone-type Smart Monitor for Healthcare
Project/Area Number |
17K13024
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
李 知炯 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (10735583)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イヤホン / 鼓膜温 / 光電容積脈波 / 体動アーティファクト / 電磁波ノイズ / 外部環境からの影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年社会問題化している熱中症は,体調不良により自律性体温調節反応が環境に十分に対応できないことで発生し,その死傷者数は年々増え続けている.そこで本研究では「熱中症予防」を目指して,実用的なウェアラブル生体情報計測システムの開発研究を行うことを目的とした.具体的な取り組みとして,当年度には耳部から自律性体温調節反応と関係がある生体情報として光電容積脈波と鼓膜温をリアルタイムで計測できるシステムを開発し,日常生活における耳部の容積脈波と鼓膜温の連続計測法に挙げられている課題点を実験的に明らかにし,解決方法について検討を行った. 先ず,耳部から計測する光電容積脈波における解決すべき課題点として,体動アーティファクトや電磁波ノイズが混入された場合,光電容積脈波から得られる情報の信頼性減少が挙げられている.このような2つの課題点を検証するため,3Dプリンターとフレキシブルフィラメントを用いて小型光電容積脈波計測イヤホンを製作し,運動中及び電磁波を遮断する電磁シールドにおける計測を行った.課題に対する対策を立てるため,周波数分析など定量的な分析を行い,原因について検討を行った. 鼓膜温の計測における解決すべき課題点としては,外部環境からの影響が挙げられている.例えば,外部環境の温度変動による顔の皮膚温が変動し,特に,耳周辺の皮膚温変動が鼓膜温に影響を与えることが報告されている.さらに,外部環境からの影響については,研究者ごとに異なる意見を持っている.このような課題点を検証するため,耳用シリコン粘土を用いて,接触式・非接触式温度センサを組み込んだ「個人適合耳型イヤーピース」を製作し,寒冷環境の室外で鼓膜温の計測実験を行った.また,鼓膜温の基準として,市販されている耳体温計を用いて同時計測を実施し,風や保温材がある環境における鼓膜温の変動について比較検討を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑光を用いた耳部における光電容積脈波計測法は歩行中で高精度の脈拍数モニタリングが可能であり,日常生活における実用的光電容積脈波計測法として利用可能性が示唆された.また,電磁波は光電容積脈波計測の精度に影響を与えないことが判った.10名の参加者に対して0,2,4 km/hの歩行課題を実施し,心電図から得た心拍数と,緑光(波長525 nm)を用いた右の耳珠前における光電容積脈波から得た脈拍数の関係性について調べた.脈拍数と心電図から得た心拍数の誤差は,3.95 bpmであり,これらの間におけるピアソンの相関係数は,0.99で強い相関関係が認められた.また,光電容積脈波計測時における,電磁シールド(減衰性能40 dB)有無での信号対雑音比の比較検討を行った.その結果,電磁シールド有りと無しでの信号対雑音比に有意差が無いことを確認した. 鼓膜温はその計測方法によって外部温度から影響を受けるが,外部の温度も計測し,鼓膜温と外部温度を用いた温度計算式の修正(校正)によって改善できると考えられる.5名の参加者に対して「個人適合耳型イヤーピース」(接触式サーミスター温度センサ,非接触式サーモパイル温度センサ)を製作し,寒冷環境の室外(約10℃)で鼓膜温の計測実験を行った.比較基準として市販されている耳体温計(ThermoScan IRT6520, BRAUN)を用いた.実験の結果,比較基準である鼓膜温の変動値は0.287℃であり,顔の皮膚温の変動による鼓膜温の影響は無く,鼓膜温は深部体温として用いられることが分かった.一方,試作した鼓膜温計測システムを用いて計測した鼓膜温は,1.970℃以上の変動があり,外部からの影響があることが分かった.
|
Strategy for Future Research Activity |
耳部における光電容積脈波計測に関しては,より激しい振動がある状況にて脈拍数の精度について検証及び精度を向上させるための対策について検討する予定である.また,様々な受光センサの感度による光電容積脈波におけるノイズの特性を分析し,適切な受光センサについて明らかにする予定である.これらの研究は,耳部の光電容積脈波が計測できるイヤホンシステムの超小型設計や市販品を目指したシステム信頼性の証明における重要なデータになると考えられる.具体的な方法としては,より激しい振動状況で計測実験を行い,光電容積脈波におけるノイズの特性について分析して,適切なフィルタアルゴリズムを適用して,システムを改良しながら段階的に研究を進める予定である. 鼓膜温の連続計測に関しては,様々な外部環境の温度における鼓膜温の変動値について明らかにして,外部環境温度を用いた新たな鼓膜温計算式を提案し,精度評価を行う予定である.精度評価については,深部体温の「gold standard」と比較検討を行う予定である. また,熱中症予防のために耳部から自律性体温調節反応の計測を目指し,鼓膜温計測システムと耳部脈波計測システム(脈拍数計測)を融合した新たなシステムの開発及びその有効性検証を重点的に進める.特に,運動中に耳部から高精度の心拍数・血管反応を計測するため,動作の影響が少ない緑波長を用いた反射式光電容積脈波計測法を適用させる予定である.特に,本計画に懸念すべき研究計画として,高精度の脈波計測が可能な耳部位置における光センサの固定法が挙げる.これについて,耳部脈波計測に関する様々な研究レビューを参考し,適切な位置や固定法を選定した上,「個人適合耳型イヤーピース」を作り,高精度の耳部脈波計測ができると考えている.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,平成29年度のIEEE EMBC国際学会が日本と近い韓国で開催されてので,学会出張による旅費が余ることになった.さらに,人に対する実験は,予備実験として少ない被験者に対して実施したため,人件費・謝金からも余ることになった. 次年度使用計画として,昨年度の研究結果を様々な国際学会にて発表する予定であり,さらに研究室のホームページを新設して,研究結果をより広く発信する予定である.
|