2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Earphone-type Smart Monitor for Healthcare
Project/Area Number |
17K13024
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
李 知炯 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (10735583)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光電容積脈波 / フォトダイオード / フォトトランジスタ / 受光面積 / 感度 / 外耳道温 / 薄膜サーミスタ / 双熱流法 |
Outline of Annual Research Achievements |
去年度の研究は,熱中症予防及び体調管理に利用できる耳部における脈拍数と深部体温を同時計測できるイヤホンシステムを日常生活でも使えるように小型化改良研究を行った.その方法として,3Dプリンターを用いて柔軟性が高いナイロン樹脂で試作されたイヤーピースに,脈拍数を計測するための緑発光ダイオード(LED)と良い感度を持つ小型フォトトランジスタ(PT),耳部温を計測するための超薄膜型サーミスターセンサ(厚さ0.5 mm)を埋め込み,重量8gの「イヤーピースセンサモジュール」を試作した.計測実験を行った結果,歩行時における脈拍数の誤差は3.95 bpmと高精度であり,耳部における温度が1 ℃内の誤差で体温の変動を反映していることが確認された.しかし,走行などの大きな動作中に検出した脈拍は未・誤検出が多く,耳部温も風や環境温の変動に対して敏感に反応することが確認された.それで本年度は,試作したイヤホンシステムから得られる脈拍数と体温の信頼性を向上させる方法に関する基礎研究を目的とした. まず,脈拍の検出信頼性を向上させる方法として,今まで検討されてこなかった光検出器の特性に着目した.特に,脈波計測によく使われている光検出器であるPTとフォトダイオード(PD)を用いて,光検出器の受光面積及び光検出器の感度による脈波信号成分の特性について検討を行い,動作中における脈波計測において適切な光検出器の特性について明らかにした.さらに,サーミスタを用いて計測した耳部の温度から正確な深部体温を算出するために,ヒーターなどで加温しない校正方法である双熱流法(K. Kitamura et al., Med. Eng. Phys., 2010)に着目した.耳部における温度に適用するために耳部の熱流に対してモデルを設計し,環境温の変動に対する外耳道内の各部位における温度変動及び温度差について検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緑光を用いて計測した光電容積脈波(PPG)において,受光センサの感度及び受光面積による「脈拍検出精度」と「信号対雑音比(SNR)」について検討実験を行った.被験者10名に対して,4つの光検出センサ(一つのPD,面積を2倍:二つのPDを並列接続,感度を倍数:PT)を組み込んで試作したセンサモジュールを装着し,手を振る動作を実施した.受光面積が増えることによってPPG信号成分が増えるが,雑音成分も比例して増えることで,SNRに有意な差が確認できなかった.しかし,感度が増えることによって,雑音が多くなってSNRに有意な差が確認された.一方,面積が増えることによってPPG振幅が大きくなり,脈拍数を検出しやすいことが確認された.すなわち,PPG計測において感度が低くても,受光面積が大きい光検出器がより有用であると考えられる. 加温しないで二つのサーミスタセンサを用いて計測した皮膚温の差から深部体温を算出できる校正法である双熱流法を試作したイヤホンシステムに適用するために,外部温度変化による「外耳道内温(空間温)」と「外耳道内表面温(皮膚表面温)」の変動について検討実験を行った.被験者10名に対して,38,28,18 ℃の一定な環境温が維持される生体情報計測室で計測を行った.環境温度が下がることによって,深部体温の基準である赤外線体温計(IRT6520)を用いて計測した鼓膜温は0.33 ℃下降,外耳道内温は0.67 ℃下降,外耳道内表面温は0.51 ℃下降が確認された.一方,38 ℃環境温の下では外耳道の内温が表面温より0.05 ℃高く,18 ℃では内温が表面温より0.11 ℃低いことが確認された.すなわち,外耳道内の空気は皮膚より環境から影響を受けやすいことである.また,外耳道の内で熱の流れをモデル化し,各計測部位における差を双熱流法に適用して深部体温の算出が可能であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた基礎的な研究成果を基に,試作したシステムを改良し,様々な環境下で有用性・信頼性を検証する実験を行う予定である.また,耳部における脈波から得られる生理指標である脈拍数と規準化脈波容積を用いた血圧推定(K. Matsumura et al., Sci. Rep. Nature, 2018)の可能性について検討する予定である. 特に,システムの改良には,二つのオリジナリティがある. 一つ目のオリジナリティは,二つの異なる波長のLEDを使っていることである.一つのLEDは動作の影響が少ない波長(525 nm)であり,もう一つのLEDは動作に敏感な波長(880 nm)である.すなわち,動作時には動作に敏感な波長から動きを計測して動作による雑音を除去することに利用することである.従来の加速度センサを用いた動作雑音除去法と比べて異なる特徴であり,LEDを用いることによってシステムの小型化及び酸素飽和度の算出が可能だと考えられる. 二つ目のオリジナリティは,加温しない双熱流法を外耳道の内における温度に適用して正確な深部体温を算出可能な新たな深部体温計測法の提案である.従来の双熱流法が皮膚表面温を用いたことに比べて異なる特徴であり,外耳道温は他の皮膚音と違って外部環境から影響も1 ℃以下であるため,より正確な深部体温が算出できると考えられる. また,本年度の研究成果は,PPG計測及び体温計測に検討されてこなかった関連研究分野の基盤的な成果であるため,論文化及び国内・外の学会での積極的な発表を行い,研究結果をより広く発信する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,次年度(若手B研究の3年目)に試作したシステムの有用性及び信頼性を評価するために,多数の人に対する実験が必要であり,人件費・謝金の余裕を確保したいと思っていたからである.さらに,若手B研究の最終年度であるため,研究成果の論文化に必要な研究費の余裕を確保したいと思っていたからである. 次年度使用計画として,多数の被験者に対する人件費・謝金及び研究室のホームページを新設や研究成果を論文化してより広く発信する予定である.
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